Ryzen 7 5700X3DとRTX 4060が低価格ゲーミングPCの新たな選択肢となる可能性

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    AM4プラットフォームの継続的な進化が低価格ゲーミングPCの構築を可能に

    AMDのSocket AM4向けCPUであるRyzen 7 5700X3DとRyzen 7 5700Xが、低価格ゲーミングPC自作の新たな選択肢として注目を集めている。AM4プラットフォームは、主力がSocket AM5に移行した後も現役であり、2024年7月には新モデルが投入される予定だ。AM4の大きな利点は、低価格のマザーボード選択肢が多いことと、メモリがDDR5よりも安価なDDR4を使用できる点にある。

    将来性においてはSocket AM5に劣るものの、現時点で低価格ゲーミングPC自作を目指すユーザーにとっては、AM4プラットフォームが魅力的な選択肢となっている。近年のゲームではCPUパワーの重要性が増しており、価格を抑えつつも8コア以上のCPUが望ましい状況となっている。

    Ryzen 7 5700X3DとRyzen 7 5700Xの特徴と性能差

    Ryzen 7 5700X3DとRyzen 7 5700Xは、どちらも8コア16スレッドのCPUだが、最大の違いは3D V-Cacheの有無にある。Ryzen 7 5700X3Dは大容量3次キャッシュの「3D V-Cache」を搭載しており、ゲームのフレームレート向上に効果的であることが他のモデルで実証されている。

    一方、Ryzen 7 5700XはRyzen 7 5700X3Dよりも実売価格が約13,000円安く、最大クロックが高いのが強みだ。また、TDPが65Wと低く、発熱も小さいため扱いやすさではRyzen 7 5700Xのほうが優れている。3D V-Cacheが効果を発揮しない場面では、Ryzen 7 5700Xのほうが有利になる可能性があり、用途に応じて選択する必要がある。

    ビデオカードの選択とシステム構成の検討

    本記事では、Ryzen 7 5700X3Dを使用しつつ10万円台前半に抑えるという目標でパーツ構成を検討している。ビデオカードはGeForce RTX 4060とGeForce RTX 3050を候補として挙げている。RTX 4060は最新世代のGPUであり、DLSS 3やAV1エンコードに対応するなど、機能面でRTX 3050を上回っている。

    一方、RTX 3050の6GB版は、3万円前後で購入できるエントリーGPUとして貴重な存在だ。補助電源の接続が不要なため、取り付けが容易というメリットもある。マザーボードはASUSの「PRIME B550M-A WIFI II」を選択している。B550チップセット搭載のmicroATXマザーボードで、ストレージの拡張性やワイヤレス機能など、現代的な仕様を備えている。

    ゲーミング性能の検証と分析

    実際のゲーミング性能を検証するため、複数のゲームタイトルでベンチマークテストを実施した。FPS系ゲームでは、RTX 4060との組み合わせで高フレームレートを実現できることが分かった。一方、RTX 3050はフルHDでのプレイには十分だが、高フレームレートの実現は難しい結果となった。

    興味深いのは、3D V-Cacheの効果が顕著に現れなかった点だ。多くのケースで、Ryzen 7 5700X3DとRyzen 7 5700Xのフレームレートに大きな差は見られなかった。これは、CPU性能が影響する前にビデオカードの性能限界に達しているためと考えられる。

    重量級ゲームでは、DLSS 3対応のタイトルでRTX 4060の優位性が際立った。Starfieldやサイバーパンク2077などでは、RTX 4060を使用することでWQHDでも快適なフレームレートを実現できている。

    低画質設定での3D V-Cacheの効果

    画質設定を下げてGPU負荷を軽減した場合、興味深い結果が得られた。特にオーバーウォッチ2やフォートナイトのパフォーマンスモードでは、Ryzen 7 5700X3Dの3D V-Cacheが効果を発揮し、Ryzen 7 5700Xよりも大幅に高いフレームレートを記録した。

    この結果から、FPS/TPSのコアゲーマーで画質を下げてフレームレートを稼ぎたいユーザーにとっては、Ryzen 7 5700X3Dが魅力的な選択肢となる可能性がある。ただし、その効果はゲームのジャンルや設定に大きく依存するため、購入を検討する際は自身のプレイスタイルと目的をよく吟味する必要がある。

    クリエイティブ作業での性能評価

    CGレンダリングや動画エンコードなど、クリエイティブ系のベンチマークでも興味深い結果が得られた。Cinebench 2024では、マルチコアスコアはほぼ互角だったが、シングルコアではクロックの高いRyzen 7 5700Xが優位に立った。

    一方、HandBrakeを使用した動画エンコードでは、3D V-Cacheの恩恵か、Ryzen 7 5700X3Dがわずかに高速だった。Adobe製品を使用したPhoto Editing Benchmarkでは、処理内容によって両CPUの優劣が分かれる結果となった。

    これらの結果は、ユーザーの主な使用目的によってCPUの選択が変わる可能性を示唆している。汎用性を重視するなら、クリエイティブ作業全般で安定した性能を発揮するRyzen 7 5700Xが好ましい選択肢となるだろう。

    温度と消費電力の考察

    温度と消費電力の面では、Ryzen 7 5700Xが明確な優位性を示した。Cinebench 2024を10分間動作させた際、Ryzen 7 5700X3Dの平均温度は74.5度、消費電力は83.9Wだったのに対し、Ryzen 7 5700Xは平均61度、77.5Wと大幅に低い値を記録した。

    この結果は、小型PCや静音性を重視するビルドにおいて、Ryzen 7 5700Xが有利であることを示している。TDPの違いを考慮しても、Ryzen 7 5700X3Dのクロックが低いにもかかわらず温度が高い点は、長期的な使用や冷却設計において考慮すべき要素となるだろう。

    総合評価と今後

    Ryzen 7 5700X3DとRyzen 7 5700Xは、それぞれに特徴と長所を持つCPUだ。Ryzen 7 5700X3Dは、特定の条件下でゲーミング性能に優れる一方、Ryzen 7 5700Xは汎用性と扱いやすさで優位に立つ。

    現時点での低価格ゲーミングPC自作においては、流通量が多く2万円台前半で購入できるRyzen 7 5700Xが、より魅力的な選択肢となっている。ただし、既存のAM4システムからのアップグレードを検討している場合、Ryzen 7 5700X3Dも検討に値する選択肢となり得る。

    ビデオカードに関しては、RTX 4060がフルHDでのゲーミングに最適なバランスを提供している。DLSS 3対応や高いパフォーマンスにより、今後のゲームタイトルにも対応できる余裕を持っている点が評価できる。

    結論として、Ryzen 7 5700XとRTX 4060の組み合わせは、現時点での低価格ゲーミングPCにおいて最も優れたバランスを実現していると言える。ただし、技術の進歩は速く、次世代CPUの登場も近づいているため、市場動向を注視しつつ、自身のニーズに合わせた選択を行うことが重要だ。

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