エクサウィザーズとNTTコミュニケーションズ（NTT Com）が、NTTグループの日本語大規模言語モデル「tsuzumi」を活用した顧客向けソリューションの共同開発を開始した。両社の強みを生かし、企業の従業員満足度向上を目指す革新的なAIツールの提供が始まっている。
tsuzumiの特徴と両社の協力体制
NTTグループが開発したtsuzumiは、日本語処理に優れた軽量な大規模言語モデル（LLM）として注目を集めている。電力コストの抑制が可能で、高いセキュリティと柔軟なカスタマイズ性も備えている。エクサウィザーズはtsuzumiの機能を活用するパートナーの一社として選ばれた。
両社の協力体制において、NTT Comはtsuzumiの提供とサポート、顧客の従業員満足度向上に向けたソリューション開発、大手顧客へのシステム営業を担当する。一方、エクサウィザーズはAIソフトウェア開発環境「exaBase Studio」とRAGOpsの提供、ソリューション開発、顧客提案、そして他の生成AI関連プロダクトの機能提供を担う。
開発されたソリューションの概要
今回開発されたソリューションは、チャットのユーザーインターフェースと、問い合わせへの回答品質を向上させるRAG（Retrieval Augmented Generation）機能を組み合わせたものだ。社内問い合わせへの対応システムなど、従業員満足度を向上させるツールとして期待されている。
exaBase Studioを開発プラットフォームとして活用することで、RAGを含む様々な機能の迅速かつ高品質な実装が可能となった。特に、本年5月に発表された「RAGOps」テンプレートは、業務関連文書の連携と人によるフィードバックを活用し、問い合わせへの回答品質を継続的に改善する仕組みを提供している。
顧客への提供状況と今後の展開
現在、開発されたソリューションは複数の顧客に提供され、実際に稼働している。エクサウィザーズとNTT Comは、この成功を足がかりに、さらなる顧客への共同提案を検討している。
今後は、この協力体制をベースに新たなソリューションを複数開発し、両社の顧客に提案・提供していく予定だ。また、エクサウィザーズが提供する法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」や、生成AIを活用したロールプレイング訓練ツール「exaBase ロープレ」などの生成AIプロダクトについても、NTT Comの顧客への提供やtsuzumiとの連携を進めていく方針が示されている。
exaBase Studioの特徴と役割
exaBase Studioは、社内外のAIモデルやサービス、データを組み合わせてAIソフトウェアを構築できる開発環境だ。直感的に理解しやすい「キャンバス」と呼ばれる設計・開発用UIを採用しており、処理を可視化することで、エンジニア以外の経営者や業務に精通した人材も開発に参加しやすい環境を提供している。
開発の煩雑な手順を半自動化する機能を搭載しており、従来の開発プロセスを大きく変革する可能性を秘めている。「動くものを触りながら改善する」というアジャイル型の内製開発を支援することで、企業のデジタルトランスフォーメーション（DX）推進に貢献することが期待されている。
産業革新と社会課題解決への取り組み
エクサウィザーズは、AIを利活用したサービス開発による産業革新と社会課題の解決を事業の柱としている。今回のNTT Comとの協業は、その理念を具現化する重要な取り組みの一つと言える。
日本語に特化したAI「tsuzumi」と、柔軟なAI開発環境「exaBase Studio」の組み合わせは、日本企業特有の課題に対応したソリューションを生み出す可能性を秘めている。従業員満足度の向上は、生産性の向上や人材流出の防止にもつながる重要な課題であり、この分野でのAI活用は今後さらに注目を集めるだろう。
両社の協業が成功を収めれば、日本企業のAI活用促進と、それに伴う業務効率化や従業員エンゲージメントの向上につながる可能性がある。今後の展開と、実際の導入企業での成果に注目が集まっている。
