携帯番号再割り当てで急増する不審な着信、その背景と対策とは

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    携帯電話番号の再利用がもたらす予期せぬ問題

    携帯電話を新規契約したにもかかわらず、突如として見知らぬ人物や企業から電話やSMSが届くという経験をした人が増加している。この現象の根底には、電話番号の再割り当てという古くからある慣行が存在する。電話番号は有限の資源であり、解約された番号は一定期間後に新規契約者へ割り当てられることがある。この再利用システムにより、以前の使用者宛ての連絡が新しい所有者に届くという事態が発生している。

    中には金融機関からの債務回収や警察からの事情聴取など、深刻な内容の電話を受ける事例も報告されている。新規契約者にとっては理不尽な状況であり、不安や恐怖を感じる人も少なくない。この問題は携帯電話サービスの黎明期から存在していたが、近年になって顕在化した背景には、携帯電話市場を取り巻く環境の大きな変化がある。

    携帯電話市場の変革が番号の流動性を加速

    携帯電話サービスの在り方は、ここ数年で劇的に変化した。かつては長期契約を前提とした「2年縛り」のような契約形態が主流であり、解約は容易ではなかった。しかし、2019年の電気通信事業法改正により、こうした拘束的な契約形態は実質的に撤廃された。これにより、利用者が自由に契約を変更できる環境が整った。

    さらに、政府主導の携帯電話料金引き下げ政策により、低価格プランが急増。月額0円から利用できるサービスも登場し、携帯電話契約の敷居が大幅に下がった。加えて、eSIM技術の普及により、1台のスマートフォンで複数の回線を使用することが一般的になりつつある。

    これらの要因が相まって、携帯電話番号の流動性が急激に高まった。その結果、再割り当てされた番号を使用する機会が増え、不審な電話を受ける人の割合も必然的に上昇したと考えられる。

    電話番号の枯渇問題と対策の限界

    総務省は電話番号の枯渇問題に対し、様々な対策を講じてきた。1999年には10桁から11桁への拡大、2002年には「080」、2013年には「070」の追加など、利用可能な番号の拡大を図ってきた。しかし、これらの対策にも限界がある。

    2021年の「IoT時代の電気通信番号に関する研究会」では、「020」から始まるデータ通信専用番号の割り当てで当面の逼迫をカバーできるとされたが、根本的な解決には至っていない。電話番号自体の数に限りがある以上、新たな番号が割り当てられたとしても、同様の問題が再発することは避けられない。

    利用者に求められる自衛策

    この問題に対する決定的な解決策は存在しないため、利用者自身による自衛策が重要となる。最も効果的な方法は、メインで使用する携帯電話番号を長期間維持することだ。番号ポータビリティ制度により、携帯電話会社を変更しても同じ番号を使い続けることが可能となっている。

    サブ回線として新規契約する場合は、データ通信専用サービスの利用を検討するのも一案だ。音声通話機能がないため、不審な電話を受ける心配がない。「020」から始まるデータ通信専用番号の割り当ても増えており、安心感が高い。

    しかし、これらの対策にも限界がある。電話番号が有限の資源である以上、完全な解決は困難だ。利用者一人一人が電話番号の重要性を認識し、可能な限り長期間使用することが、問題の緩和につながるだろう。

    携帯電話番号の再割り当て問題は、デジタル社会の進展に伴う新たな課題の一つと言える。技術の発展と社会システムの変革が、思わぬ形で個人の日常生活に影響を及ぼす事例として、今後も注視していく必要がある。

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