東急百貨店が渋谷エリアの食の4拠点にデジタルマップを導入し、顧客の買い物体験を大きく変革させた。ボールドライト株式会社が提供するデジタルフロアマップ・プラットフォーム「プラチナモール」を活用し、2024年8月に本格的な運用を開始した。
デジタルマップ導入の背景と目的
東急百貨店は、渋谷ヒカリエや渋谷スクランブルスクエアなどの大規模複合施設に出店し、渋谷エリアに約9,700㎡の面積で約240ショップを展開する「食の4拠点」を運営している。従来、各大規模複合施設が設置するフロアマップに頼っていたが、自社起点で情報を発信できるマップの必要性が高まっていた。
東急百貨店がデジタルマップの導入を決定した主な理由は以下の通りだ。
- 各店舗の位置や内部のショップ配置を効果的に周知する
- マップの多言語化に対応する
- マップ管理の工数を削減する
デジタルマップの導入により、東急百貨店は顧客の利便性向上と同時に、自社の業務効率化も目指している。
プラチナモールを活用したデジタルマップの特徴
東急百貨店は、プラチナモールを利用して5つのマップを構築した。渋谷に展開する食の4拠点をまとめて紹介する全体マップ「東急百貨店 「渋谷フード」マップ」を中心に、各拠点のデジタルマップがシームレスに連携している。
スマートフォン対応で利便性向上
顧客はスマートフォンからデジタルマップにアクセスできるため、従来の紙のマップと比較して利便性が大幅に向上した。キーワードやカテゴリ検索、ショップの位置確認、店舗内の経路案内などの機能が利用可能となり、顧客の買い物体験がより快適になった。
回遊促進と機会損失の削減
デジタルマップの導入により、東急百貨店は顧客の回遊促進と機会損失の削減を実現した。顧客が目的のショップを簡単に見つけられるようになったため、店舗間の移動がスムーズになり、より多くのショップを訪れる可能性が高まった。
管理工数と印刷コストの削減
デジタル化によって、マップ管理における更新の工数が大幅に削減された。また、紙のマップの印刷数を減らすことで、コスト削減と環境への配慮も実現している。急なテナント変更などにも即座に対応できるため、常に最新の情報を提供することが可能となった。
対象となる4つの食の拠点
東急百貨店がデジタルマップを導入した4つの食の拠点は以下の通りだ。
- 渋谷マークシティ/しぶちか内「渋谷 東急フードショー」
- 渋谷スクランブルスクエア内「東急フードショーエッジ」
- 渋谷ヒカリエ ShinQs内「東横のれん街」
- THE WINE by TOKYU DEPARTMENT STORE
各拠点のデジタルマップは、東急百貨店の公式ウェブサイトからもアクセス可能となっている。
デジタルマップがもたらす顧客体験の変革
デジタルマップの導入は、単なる案内ツールの進化にとどまらず、顧客の買い物体験全体を変革する可能性を秘めている。
時間と労力の削減
顧客は目的のショップを素早く見つけられるようになり、店内で迷う時間や探す労力が大幅に削減された。また、最適な経路案内機能により、効率的な買い物が可能となった。
新たな発見の促進
デジタルマップを通じて、顧客は知らなかったショップや商品に出会う機会が増えた。カテゴリ検索機能を活用することで、興味のある分野の店舗を網羅的に探索できるようになった。
多言語対応による国際化
多言語対応のデジタルマップにより、外国人観光客も言語の壁を感じることなく、スムーズに買い物を楽しめるようになった。インバウンド需要の取り込みにも大きく貢献すると考えられる。
ボールドライト社の今後の展望
ボールドライト株式会社は、2023年にプラチナモールの提供を開始して以来、国内初のデジタルフロアマップ・プラットフォームとして展開してきた。今回の東急百貨店への導入事例を足がかりに、今後さらに多くの商業施設のDXを支援していく方針だ。
移動と発見の体験を変革し、業務の効率化を推進するプラチナモールは、商業施設以外にも住宅展示場やスタジアムなど、さまざまな施設でのデジタルマップ化を進めている。
結論:デジタル化がもたらす新たな可能性
東急百貨店のデジタルマップ導入は、小売業界におけるデジタルトランスフォーメーションの好例と言える。顧客体験の向上と業務効率化の両立を実現し、今後の商業施設のあり方に大きな影響を与えるだろう。
デジタル技術の進化により、従来の物理的な制約を超えた新たなサービスの可能性が広がっている。今後は、ARやVR技術との連携、パーソナライズされた買い物提案など、さらなる革新的なサービスの登場が期待される。
小売業界は、こうしたデジタル化の波に乗り遅れることなく、常に顧客のニーズに寄り添い、新しい価値を提供し続けることが求められる。東急百貨店の取り組みは、その先駆けとなる重要な一歩と言えるだろう。