リコージャパン2024年度戦略発表 AI・セキュリティ・脱炭素化で顧客支援強化へ

    画像:ZDNET(https://japan.zdnet.com/article/35223010/)より

    リコージャパンは2024年度の新事業戦略を発表した。AIやセキュリティ、脱炭素ソリューションを重点分野とし、デジタルサービス企業への変革を加速させる方針を打ち出した。中小企業や自治体向けのDX支援、人材育成にも注力する計画だ。

    目次

    AI導入支援で中小企業のデジタル化を促進

    リコージャパンは、AI導入に関して多くの企業が課題を抱えている現状を指摘した。7割の企業がAIを未導入であり、活用方法の不明確さや社内の理解不足、人材不足がAI導入の障壁となっているという。

    リコージャパンは自社内でのAI実践経験を活かし、「お客さまが使えて使いこなせるAI」の提供を目指している。社内では「FAQ支援AI」や「レコメンドAI」、「文字認識AI」などを活用し、業務効率化に成功した実績がある。

    さらに、Microsoft製品に精通したエバンジェリスト約800人を擁し、「Copilot for Microsoft365」の利用促進にも力を入れている。これらの実践経験を基に、顧客企業の業務効率化につながる提案を行う体制を整えた。

    Copilot導入支援サービスの充実

    リコージャパンは、Copilot導入に関する包括的なサポートサービスを提供している。導入支援ワークショップや環境構築サービス、業務整理・改善提案、プロンプトハンズオン、生産性向上サービスなど、多岐にわたるメニューを用意した。

    セキュリティ対策の強化で企業の情報資産を守る

    リコージャパンは、近年増加している第三者によるシステム侵入やアカウント窃取の問題に対応するため、セキュリティ対策の強化を重点施策の一つに掲げた。単なる入口対策だけでなく、内部対策、出口対策を含む包括的なセキュリティソリューションの提供を目指している。

    リコージャパンの代表取締役社長執行役員である笠井徹氏は、「侵入が避けられないことを前提にした対策が必要だ」と述べ、セキュリティポリシーの策定から弱点の洗い出し、防御、検知、対応、復旧までを含めた伴走型サービスの提供を強調した。

    社内実践によるセキュリティノウハウの蓄積

    リコージャパンは、全社員参加型の「事業に寄与するISMS」を継続的に実践している。全国81拠点に設置されたライブオフィス「ViCreA」では、セキュリティの実践事例を詳細に紹介しており、顧客企業への提案力強化につなげている。

    さらに、デジタルデータソリューションとの提携により、セキュリティ対策製品「DDHBOX」の販売を強化している。2024年4月から7月の4カ月間だけで、前年度通期実績の約2倍の販売数を記録し、今後さらなる成長が期待されている。

    脱炭素ソリューションで中小企業のGX推進をサポート

    リコージャパンは、環境対策に関心が薄かった中小企業でも、取引先からの要請で環境対応を迫られている実態を踏まえ、脱炭素ソリューションの提供に注力している。

    笠井氏は、「リコージャパンはZEB(脱炭素実践事業所)化を推進し、省エネ化、脱炭素化を実現すると同時に、働きやすさを追求した事業所を全国17カ所に設置している」と述べ、大手企業から中小企業、自治体まで幅広いニーズに対応できる体制を整えたことを強調した。

    具体的な脱炭素化支援メニュー

    リコージャパンは、顧客企業の脱炭素化に向けて、以下のようなメニューを用意している:

    1. ロードマップや戦略の作成・策定支援
    2. エネルギー活用の設備導入・運用サポート
    3. 助成金・補助金の申請サポート

    これらのメニューを通じて、顧客企業に寄り添いながら脱炭素化を推進していく方針だ。

    デジタル人材育成で顧客サービス向上を目指す

    リコージャパンは、デジタルサービス企業への変革を加速させるため、人材育成にも力を入れている。独自の「プロフェッショナル認定制度」を展開し、デジタル人材として活躍できるレベル3以上の社員数を2023年度末で8204人まで増やした。2024年度には9400人に拡大する計画だ。

    笠井氏は、「認定レベルは7段階あり、レベル5以上の高度デジタル人材も大きく増やしていきたい」と意欲を示した。

    Kintone認定資格者の増加

    リコージャパンは、顧客に価値を提供する人材育成に注力している。その結果、Kintone認定資格者数が2024年6月末時点で485人に達した。取締役常務執行役員デジタルサービス企画本部長の宮本浩嗣氏は、「人材育成により意識が変化し、価値を提供できるようになり、課題解決の提案結果として、RICOH kintone plusが売れている」と成果を語った。

    自治体DX支援で地域社会のデジタル化を推進

    リコージャパンは、地方自治体のDX支援にも注力している。取締役執行役員パブリックサービス本部長の花井厚氏は、日本の自治体のDXが世界的に遅れている現状を指摘し、「ViCreA」による新たな働き方の提案や、「住民が行かない、書かない、並ばない窓口」を実現するソリューションの提供に力を入れていると説明した。

    リコージャパンは全国70自治体と連携協定を結んでおり、最近では自治体との連携だけでなく、大学や信用金庫、システムインテグレーターとの連携も増加している。

    リコージャパンの強みと今後の展望

    リコージャパンは、国内48支社349拠点を展開し、約1万8000人の従業員を擁する。営業約7400人、カスタマエンジニア約4400人、システムエンジニア約1300人、コンタクトセンター約1000人と、多様な人材を抱えている。

    笠井氏は、「ESG(環境・社会・統制)とSDGs(持続可能な開発目標)、事業の同軸化」を目指すリコーグループの方針のもと、「お客さまの成長と社員の成長の同軸化」を重視する考えを示した。顧客の成長がリコージャパンのビジネス成長につながり、結果としてESGとSDGs、事業の同軸化が実現するというビジョンを描いている。

    今後は、「企業価値向上プロジェクト」の一環として、販売・サービス体制の見直しも進める。顧客接点でのデジタル活用強化、SFAの刷新、バックオフィス改善などを通じて生産性を向上させ、生み出された人材を顧客接点強化と伴走支援に振り向ける計画だ。

    リコージャパンの新戦略は、AI、セキュリティ、脱炭素化という時代のニーズに即した分野に注力しつつ、人材育成と顧客との関係強化を通じて、デジタルサービス企業としての地位を確立しようとするものだ。今後の展開が注目される。

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