アスクルが革新的な「当日配送選択式サービス」を導入、BtoB通販の新時代を切り拓く

    当日配送選択式サービス
    画像:ECのミカタ(ecnomikata.com/ecnews/43653/)より

    アスクルが7月2日からBtoB通販「ASKUL」において画期的な「当日配送選択式サービス」を開始した。この新サービスは、顧客ニーズと物流業界の課題に同時に応える革新的な取り組みだ。従来の一律当日配送から、顧客が配送日を選択できるシステムへと移行することで、配送ドライバーの労働環境改善と顧客満足度の向上を両立させる狙いがある。

    目次

    「当日配送選択式サービス」の概要と導入背景

    アスクルは長年、当日配送エリアにおいて前日18時から当日11時までの注文を一律で当日配送してきた。しかし、配送ドライバー不足という業界全体の課題に直面し、新たな解決策を模索していた。

    「当日配送選択式サービス」は、この課題に対するアスクルの革新的な回答だ。このサービスでは、初期設定を翌日配送とし、顧客が希望する場合のみ当日配送を選択できる。この変更により、当日配送の物量を調整し、ドライバーの生産性向上と労働環境改善を図る。

    サービスの対象と仕組み

    新サービスの適用対象は、以下の条件を満たす注文だ。

    • 前日18時から当日11時までの注文
    • 配達指定日がない注文
    • 配達先が当日配送可能エリア
    • 注文商品が最寄りのセンターから出荷可能

    従来のシステムでは、商品ページの配達日が当日の日付のみ表示されていたが、新サービスでは翌日の日付が初期設定となる。当日配送を希望する場合は、「お急ぎ便」として併記される選択肢を選ぶことができる。

    また、顧客の利便性を考慮し、購入画面での「お急ぎ便」への変更や、マイページでの「お急ぎ便」をデフォルトに設定する機能も用意されている。

    実証実験の成果と顧客ニーズの把握

    アスクルは2024年1月から3月にかけて、名古屋センターの配送エリアで実証実験を実施した。その結果、驚くべき成果が得られた。

    当日配送の配送個数が約60%減少し、翌日配送に移行したことで、配送ドライバーの生産性が11%向上。さらに、ドライバーの労働時間が1日あたり平均45分短縮されるという目覚ましい効果が確認された。

    顧客ニーズの深い理解

    アスクルは2021年7月に144人の顧客を対象としたWeb調査を実施し、当日配送に関する顧客ニーズを詳細に分析した。その結果、「当日配送を常に利用したい」という回答はわずか1割にとどまり、「急いでいるときに利用したい」という回答が8割を占めた。

    この調査結果は、多くの顧客が必ずしも毎回当日配送を必要としているわけではないことを示している。アスクルは、このニーズを的確に捉え、柔軟な配送オプションを提供する「当日配送選択式サービス」の開発につなげた。

    新サービスがもたらす多面的なメリット

    「当日配送選択式サービス」の導入は、単にドライバーの労働環境改善だけでなく、多面的なメリットをもたらすと期待されている。

    ドライバーの労働時間短縮は、彼らの生活の質を向上させるだけでなく、より効率的な配送ルートの設計を可能にする。その結果、顧客の在勤時間帯に配送できる荷物が増加し、不在による再配達の削減にもつながる。

    また、この取り組みは環境負荷の低減にも貢献する可能性がある。再配達の減少は、不要な走行距離を減らし、CO2排出量の削減につながるためだ。

    今後の展開と業界への影響

    アスクルは、名古屋センターの配送エリアでの成功を踏まえ、2025年5月までに全エリアでの展開を目指している。今後、効果測定を継続的に実施しながら、他の配送エリアにも順次サービスを拡大していく計画だ。

    この革新的なサービスは、BtoB通販業界全体に大きな影響を与える可能性がある。顧客ニーズと業界課題の両方に対応するこのアプローチは、他社にも同様の取り組みを促す可能性がある。

    物流革命の先駆けとなるか

    アスクルの「当日配送選択式サービス」は、eコマース時代における物流の在り方に一石を投じる取り組みだ。顧客の選択肢を増やしながら、同時に業界の構造的な問題にも取り組むという、バランスの取れたアプローチは高く評価できる。

    この取り組みが成功を収めれば、BtoB通販業界全体の標準となる可能性もある。顧客、企業、そして社会全体にとって価値のある変革となるか、今後の展開が注目される。

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