車内空間を損なわない巧みなインストール
トヨタのミニバン、ヴォクシーに施されたカーオーディオのインストール。この事例は、車内の広さを保ちながら高音質を追求するという、一見相反する要素を見事に両立させた。香川県のピットハウスコスギが手がけたこのインストールは、限られたスペースを最大限に活用し、オーナーの要望を細部まで反映させた素晴らしい仕上がりとなっている。
車内のデザインを損なわずに高音質を実現するのは、カーオーディオインストールにおいて常に課題となる。今回のケースでは、Aピラーやドアミラー裏といった、通常あまり注目されない場所を巧みに利用することで、この課題を克服している。特にAピラーへのミッドレンジスピーカーの埋め込みは、車内の雰囲気を壊すことなく、音響的にも理想的な配置を実現している。
ブラム社製スピーカーが生み出す立体的なサウンドステージ
本インストールの核心となるのは、ブラム社のSignature multixシリーズのスピーカー群だ。フロントスピーカーにはツイーターTSM25MG 70HRとミッドレンジMS3 multixを採用。これらの組み合わせにより、クリアで立体的なサウンドステージが構築されている。
特筆すべきはドアミラー裏へのツイーター設置だ。この配置は単なる空間利用の妙というだけでなく、音響的な観点からも理にかなっている。ツイーターを耳の高さに近い位置に設置することで、高域の指向性を活かし、より自然な音像定位を実現している。
さらに、ドアには同シリーズのWS6 multixをインナー取り付けしている。これにより、中低域の再生能力を高めつつ、フロントスピーカー群との音の統一感を維持している。こうした一貫性のあるスピーカー選択は、全体的なサウンドクオリティの向上に大きく寄与していると考えられる。
実用性と高音質の融合 シート下のサブウーファーが示す工夫
低音域の再生を担うのは、ブラム社のパワードサブウーファーMSA25Pだ。このユニットをシート下に配置するという選択は、実用性と音質の両立を図る上で極めて重要な意味を持つ。
通常、サブウーファーはラゲッジスペースに設置されることが多い。しかし、それではミニバンの大きな魅力である広い荷室を犠牲にしてしまう。シート下への設置は、この問題を見事に解決している。さらに、車内の前方に低音源を配置することで、より自然な音の広がりを実現している可能性がある。
最新技術を活用した多機能システム
本システムは、純正のディスプレイオーディオを中心に構成されている。ここにVISITを接続することで、YouTubeなどの動画配信サービスの視聴を可能にしている。これは、現代の多様なメディア消費ニーズに対応した賢明な選択と言える。
音質面では、オーディソン社のDSPアンプ、プリマAFM12.14bitを導入。このDSP処理により、車内という特殊な環境に合わせた綿密な音場調整が可能となっている。外部パワーアンプの使用と相まって、必要最小限のユニット構成ながら充実したサウンドを実現している。
結論 ミニバンの魅力を損なわない高音質化の成功例
このインストール事例は、ミニバンユーザーにとって非常に示唆に富んでいる。車内の広さや使い勝手を犠牲にすることなく、高音質を追求することが可能だと実証しているからだ。
特に注目すべきは、Aピラーやドアミラー裏、シート下といった、従来あまり活用されてこなかったスペースを効果的に利用している点だ。これにより、車内のデザインや機能性を損なうことなく、理想的なスピーカー配置を実現している。
また、純正ディスプレイオーディオを活用しつつ、外部DSPアンプを導入するという方法は、コストパフォーマンスの面でも優れている。最新の通信技術を活用した動画視聴機能の追加は、オーディオシステムの利用価値をさらに高めている。
総じて、この事例は音質と実用性の両立を目指すカーオーディオファンにとって、大いに参考になるものと言えるだろう。ミニバンならではの広さと使い勝手を保ちつつ、高音質を追求するという、一見困難に思える課題に対する一つの解答を示している。