XREALが3万円台のAndroid ARデバイス「Beam Pro」を発表

    Beam Pro
    画像:マイナビニュース(news.mynavi.jp)より
    目次

    空間コンピューティングの新たな扉を開く低価格デバイス

    XREALが発表した「Beam Pro」は、従来のスマートフォンの概念を覆す革新的なAndroidデバイスだ。SIMカードスロットを持たないこの機器は、一見すると通常のスマートフォンとは異なる印象を与える。しかし、その真価は空間コンピューティングデバイスとしての機能にある。

    XREALは「Beam Pro」を「スマートフォンの代替品ではなく、スマートフォンを解放する万能な空間コンピューティングデバイス」と位置付けている。この言葉の意味するところは、「Beam Pro」がARグラス「XREAL Air」シリーズと組み合わせることで、アップルのVision Proが目指す空間コンピューティング環境を実現しようとする野心的な試みだということだ。

    最も注目すべき点は、その価格設定にある。メモリ6GB、ストレージ256GBモデルの公式価格が3万2980円、セール時には2万9680円という驚異的な低価格で提供されている。さらに、ARグラス「XREAL Air 2」とのセット販売も7万9160円で可能だ。Vision Proの59万9800円という価格と比較すると、その差は歴然としている。

    独自の2眼カメラシステムがもたらす立体感あふれる映像体験

    「Beam Pro」の最大の特徴は、人間の目の幅に近づけた2眼カメラシステムだ。公称5,000万画素センサーとフルサイズ換算14mmレンズを採用した2つのカメラが、50mm離れた位置に配置されている。

    この設計は、レンズの基線長を人間の瞳孔間距離(IPD)に近づけることを目的としている。結果として、より立体感が強く、リアルで没入感のある空間ビデオや空間写真の撮影が可能となった。

    XREALによると、メインの被写体から1〜2.5メートルの距離で撮影すると、最も立体感のある動画や写真が得られるという。個人的な感覚では、1〜1.5メートルの距離が最も強い立体感を感じられると考えられる。

    このような独自のカメラシステムは、将来的に空間ビデオや立体ビデオのシェアサービスが普及した際に、大きな価値を持つ可能性がある。現時点で「Beam Pro」を使って立体動画作品を制作しておくことは、将来的な展開を見据えた戦略的な選択肢となり得るだろう。

    ARグラスとの連携がもたらす新たなエンターテインメント体験

    「Beam Pro」とXREAL Air 2シリーズを組み合わせることで、ユーザーは瞬時にvisionOSのようなアイコンランチャーを体験できる。「Beam Pro」を空間マウスとして使用し、ARグラス内に大きく映し出されたコンテンツを選択することが可能だ。

    視野の広さは、感覚的には50センチ先の32インチ画面、あるいは1メートル先の50インチ画面に相当する。このサイズ感は、十分な臨場感を提供し、従来のモバイルデバイスでは得られなかった没入型のエンターテインメント体験を可能にする。

    移動中の電車やバス内でNetflixやAmazon Primeの動画を楽しむだけでなく、電子書籍を読むためのデバイスとしても活用できる。さらに、Wi-Fi 6対応ルーターと接続することで、Steam Linkなどのクラウドゲームをほぼ遅延なしで楽しむことができる。

    「Beam Pro」が示す空間コンピューティングの未来

    「Beam Pro」採用のSnapdragon 6 Gen 1チップセットの性能は、当初の予想を大きく上回るものだった。この高性能SoCにより、「Beam Pro」は単なるARデバイスの補助役を超えて、独立したエンターテインメントプラットフォームとしての可能性を秘めている。

    2つのUSB-Cポートを搭載し、ARグラス接続用と充電用に分けられている点も、使い勝手の良さを向上させている。27WのUSB PD充電対応やmicroSDカードスロットの存在も、デバイスの汎用性を高めている。

    「Beam Pro」は、高価なVR/ARデバイスが主流だった空間コンピューティング市場に、手頃な価格で参入できる選択肢を提供している。この低価格戦略は、空間コンピューティング技術の普及を加速させ、より多くのユーザーがこの新しい技術を体験する機会を創出するだろう。

    今後、アップルが最新Pro系以外のデバイスにも空間ビデオの撮影機能を開放した場合、空間ビデオや立体ビデオのシェアサービスの発展が予想される。その際、「Beam Pro」のような先駆的なデバイスを使用して制作された立体動画作品が、新たなコンテンツ市場を形成する可能性がある。

    「Beam Pro」は、空間コンピューティングの未来を垣間見せる革新的なデバイスだ。その登場は、ARエンターテインメントの新時代の幕開けを告げるものかもしれない。今後の展開に、大いに期待が持てるだろう。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    THEIT公式アカウント。日々の主要なITニュースを最速でお届けします。

    目次