中川町が全国に先駆けて電子母子手帳を採用
北海道中川町が、母子モ株式会社の母子手帳アプリ「母子モ」を導入し、「中川町子育て支援アプリべびちょ」として2024年10月1日から提供を開始した。中川町では「安心・安全で楽しく子育てができる環境を目指します」を町の基本目標の一つに掲げており、子どもを安心して産み育てることができる環境を整え、楽しく子育てができる町を地域ぐるみで目指している。
「母子モ」は、650以上の自治体で導入されている電子母子手帳アプリであり、こども家庭庁が目指す令和8年度からの電子版母子健康手帳の原則化に先駆けて運用を開始することとなった。このアプリは、予防接種のスケジュールや健診結果の管理、地域の情報配信などをスマートフォンやタブレット端末、PCで簡単に行えるようサポートする。
データはクラウド上に保存されるため、災害などによる母子健康手帳紛失時のバックアップとなるほか、他市区町村への転居時や機種変更時の継続利用にも対応しており、安心して使い続けることができる点が特徴だ。
中川町の充実した子育て支援策
中川町では、子育て世帯への支援として、「出産祝金」制度を設けている。第1子と第2子にはそれぞれ20,000円、第3子以降にはそれぞれ100,000円を支給しており、経済的な面から子育て家庭をサポートしている。また、チャイルドシートの準備が困難な人向けに、半年間無料でチャイルドシートを貸し出すサービスも行っている。
さらに、中川町地域子育て支援センター「まめちょ」では、子育てに関する相談や情報提供、子育て講座に加え、「あそびの広場」や「サークル育成」などの活動を通じて、人と人とのつながりを育てることで、保護者の孤立を防ぎ、のびのびと子育てできるよう応援している。
今回の「べびちょ」アプリの導入は、こうした町の取り組みを子育て世帯にもっと便利に活用してもらうために、子育て情報発信の新たなツールとして採用されたものだ。
「べびちょ」アプリの充実した機能
多様な記録・管理機能
「中川町子育て支援アプリべびちょ」は、妊産婦と子どもの健康データの記録・管理や予防接種のスケジュール管理など、多岐にわたる機能を備えている。具体的には、妊娠中の体調・体重記録、胎児や子どもの成長記録、身長体重曲線による肥満・やせの程度の確認などがグラフ化して表示される。
予防接種に関しては、標準接種日の自動表示や接種予定・実績管理、受け忘れ防止アラートなどの機能が搭載されており、忙しい親の負担を軽減する。また、妊婦や子どもの健康診断データも記録できるため、成長の過程を一目で確認することが可能だ。
情報提供とアドバイス機能
アプリには、出産・育児に関する基礎情報や、妊娠週数や子どもの月齢に合わせた知識やアドバイスが盛り込まれている。さらに、沐浴や離乳食の作り方などの動画コンテンツも用意されており、初めての子育てに不安を感じる親にとって心強い味方となるだろう。
また、周辺施設の案内機能も搭載されており、病院や幼稚園・保育園、公園、子育て施設などの情報を簡単に確認することができる。地域に密着した情報提供により、子育て世帯の利便性が大幅に向上することが期待される。
「できたよ記念日」機能で思い出を記録
「べびちょ」アプリの特徴的な機能の一つが、「できたよ記念日」と呼ばれる育児日記機能だ。こども家庭庁の母子健康手帳様式例などを元に作成されたこの機能では、子どもの成長を写真と共に記録することができる。
初めての胎動やキック、寝がえり、おすわり、ハイハイ、ひとり立ち、ひとり歩きなど、約150項目の記念日を記録可能で、それぞれの記念日には日付と言葉が入った専用のテンプレートが用意されている。この機能により、子どもの成長の喜びを視覚的に残すことができ、同時に発達の目安としても活用できる。
データ共有機能で家族の絆を深める
「べびちょ」アプリは、子どもの成長記録や健康データを家族のスマートフォンなどでも閲覧できる機能を備えている。さらに、SNSへの投稿機能も搭載されているため、離れて暮らす祖父母など、広く家族や親戚と子どもの成長を共有することが可能だ。
この機能により、核家族化が進む現代社会において、家族の絆を深める一助となることが期待される。また、両親が協力して子育てに取り組む意識を高める効果も期待できるだろう。
母子モ社の子育てDXへの取り組み
母子モ株式会社は、2030年までに妊娠から子育て期の手続きについて、必要な人に情報を届け、保護者、自治体、医療機関の手間を無くすことをビジョンとして掲げている。同社は、子育て関連事業のデジタル化を支援するサービス「子育てDX®」を展開しており、厚生労働省の乳幼児の定期予防接種予診票のデジタル化に向けた地域実証を行うなど、さまざまな子育て関連事業のDXを推進している。
母子モ社のこうした取り組みは、保護者の不安や負担を軽減し、安心で簡便な子育て社会を地域と共創することを目指すものだ。「べびちょ」アプリの導入は、その一環として位置づけられる。
今後の展開と課題
中川町における「べびちょ」アプリの導入は、地方自治体における子育て支援のデジタル化の先駆的な事例として注目される。今後、他の自治体でも同様のアプリ導入が進むことが予想されるが、その際には以下のような点に留意する必要があるだろう。
まず、デジタルデバイドの問題だ。スマートフォンやタブレット、PCの操作に不慣れな保護者や、経済的理由でデジタル機器を所有していない家庭への対応が求められる。中川町では、従来の紙の母子手帳と併用する形でアプリを導入しているが、今後はデジタルリテラシーの向上支援や、公共施設でのデバイス貸し出しなどの対策も検討する必要があるかもしれない。
また、データセキュリティの問題も重要だ。個人情報保護の観点から、アプリ内のデータの取り扱いには細心の注意を払う必要がある。中川町と母子モ社は、この点について十分な対策を講じているとしているが、今後さらなる技術革新や法整備に応じて、セキュリティ対策を継続的に強化していくことが求められるだろう。
さらに、アプリの機能拡充も課題となる。現在の「べびちょ」アプリは多くの機能を備えているが、利用者のニーズは時代と共に変化していく。定期的なアップデートや新機能の追加、ユーザーフィードバックの反映など、継続的な改善が必要となるだろう。
結論
中川町における「べびちょ」アプリの導入は、地方自治体の子育て支援におけるデジタル化の好例として評価できる。子育て世帯の利便性向上や、自治体の業務効率化、さらには地域全体での子育て環境の改善につながる可能性を秘めている。
一方で、デジタルデバイド対策やセキュリティ強化、継続的な機能改善など、克服すべき課題も存在する。これらの課題に適切に対応しつつ、他の自治体や関連機関との連携を深めることで、より効果的な子育て支援システムの構築が期待される。
中川町の取り組みが、全国の自治体における子育て支援のデジタル化のモデルケースとなり、日本全体の子育て環境の向上につながることを期待したい。