博報堂が新設した生活者発想技術研究所、VUCAの時代に企業の創造力を刺激

    画像:MarkeZine(https://markezine.jp/article/detail/46798)より

    博報堂が2024年9月1日に新たな研究所を立ち上げた。「博報堂生活者発想技術研究所」と名付けられたこの組織は、企業の創造力を高め、VUCAの時代に適応するための重要な役割を担うことが期待されている。

    目次

    生活者発想技術研究所の設立背景

    現代のビジネス環境は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)という言葉で表現されるほど、予測困難で複雑化している。このような状況下で、企業は従来の固定観念にとらわれない創造的な対応が求められるようになってきた。

    博報堂は、この課題に対応するため、研究デザインセンター(RDC)傘下に新たな研究所を設立した。生活者発想技術研究所は、企業が一人の生活者としての視点を持ち、社会や生活者価値の追求を強化することを目指している。

    企業の存在意義の変化

    近年、企業の存在意義は経済価値だけでなく、社会的価値や生活者価値の追求へとシフトしている。パーパス(企業の存在意義)に代表されるように、企業は社会や顧客に対してどのような価値を提供できるかが問われるようになった。

    生活者発想技術研究所は、このような変化に対応し、企業が生活者の視点を取り入れながら、より創造的で社会に貢献するビジネスを展開できるよう支援する役割を担う。

    研究所の主な研究開発領域

    博報堂生活者発想技術研究所は、幅広い領域で研究開発を行う予定だ。具体的には以下の5つの分野に注力する。

    生活者発想経営に関する研究開発

    企業経営において生活者の視点をどのように取り入れるか、その方法論や効果について研究を行う。生活者発想研究や次世代ブランド研究などが含まれる。

    フォーカス型生活者研究開発

    特定の世代や属性に焦点を当てた研究を行う。例えば、若者研究やシニア世代研究などが挙げられる。これらの研究は、ターゲットとなる層のニーズや価値観を深く理解し、効果的なマーケティング戦略の立案に役立つ。

    生活者心理・行動に関する研究開発

    人間の心理や行動パターンを科学的に分析し、ビジネスに活用する研究を行う。クロスモーダル研究、行動デザイン、買物行動研究などが含まれる。これらの研究は、消費者の無意識の行動や決定プロセスを明らかにし、より効果的な製品開発やサービス設計に貢献する。

    ウェルビーイング社会共創に関する研究開発

    未来洞察研究や生活者課題解決研究などを通じて、社会全体のウェルビーイング(幸福)向上に貢献する方法を探る。企業が社会課題の解決に寄与しながら、持続可能なビジネスモデルを構築するための知見を提供する。

    生活者発想に基づく創造性に関する研究開発

    アートシンキング研究や組織の創造性研究など、生活者の視点を取り入れた創造的な問題解決方法について研究する。企業組織の創造性を高め、イノベーションを促進するための方法論を開発する。

    研究所の体制と今後の展望

    博報堂生活者発想技術研究所の初代所長には、竹内慶氏が就任した。竹内氏は2001年に博報堂に入社し、マーケティング部門を経て、ブランドデザイン専門組織の立ち上げに参画した経験を持つ。約20年にわたり、多様なクライアント企業のブランドづくりとイノベーションを支援してきた実績がある。

    研究所は設立時点で29名のスタッフを擁し、各専門分野の研究者や実務経験者が集まっている。「リベラルアーツ×ビジネス」「アートシンキング×デザインシンキング」など、領域横断型のアプローチを推進することで、従来の枠にとらわれない新しい発想や解決策を生み出すことが期待されている。

    博報堂は、この新しい研究所と既存の博報堂生活総合研究所の2つの研究所活動を中心に、生活者発想を「発想の原点」として、企業や社会に新しい価値を提案していく方針だ。両研究所の連携により、基礎研究から実践的なソリューション開発まで、幅広い領域をカバーすることが可能となる。

    今後、生活者発想技術研究所の活動が本格化するにつれ、日本企業の経営やマーケティング手法に大きな影響を与える可能性がある。VUCAの時代において、生活者の視点を取り入れた創造的なアプローチは、企業の競争力強化と社会課題の解決の両立に貢献すると考えられる。

    企業と生活者、そして社会全体の価値向上を目指す博報堂の新たな取り組みは、日本のビジネス界に新たな風を吹き込むことだろう。今後の研究成果と、それが実際のビジネスにどのように応用されていくかに注目が集まる。

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