熱中症対策にAIとIoTを活用、MODEが新サービスを展開
MODEは、IoT技術と生成AIを組み合わせた新しい熱中症対策ソリューションの提供を開始した。このサービスは、鶴賀電機の暑さ指数（WBGT）測定器「小形WBGTトランスミッタ」からリアルタイムで環境データを取得し、AIがチャットツールを通じて各作業員に熱中症リスクを通知する仕組みだ。
MODEのCEO上田学氏は、「我々のサービスは、作業現場の安全性を大幅に向上させる可能性を秘めている」と述べ、このソリューションの重要性を強調した。現場の安全管理に革新をもたらすこのサービスは、産業界から大きな注目を集めている。
深刻化する熱中症問題と新サービスの必要性
2023年の夏は記録的な猛暑となり、熱中症による救急搬送者数が前年比で2万人以上増加した。2024年も状況は改善せず、7月末時点で前年同期を1万人上回る搬送者数を記録している。気象庁は9月まで熱中症への警戒が必要だと予報を出しており、熱中症対策は喫緊の社会課題となっている。
特に建設業界では、熱中症による死傷者数が最も多く、2023年には12件の死亡災害が発生した。この深刻な状況に対応するため、MODEは鶴賀電機の「小形WBGTトランスミッタ」を標準サポートセンサーとして採用し、BizStackおよびBizStack Assistantへの対応を完了させた。
労働安全の専門家は、「建設業界における熱中症対策は、まさに生命線だ。MODEのサービスは、この課題に対する革新的なアプローチを提供している」と評価している。
WBGTの重要性と新サービスの仕組み
暑さ指数（WBGT）は、単なる気温だけでなく、湿度や日射、輻射熱などを総合的に評価した指標だ。MODEのサービスは、この重要な指標をリアルタイムで監視し、危険レベルに達した際に即座に作業員に通知する。
MODEの技術責任者は、「WBGTは熱中症リスクを正確に評価する上で欠かせない指標だ。我々のシステムは、この指標を効果的に活用することで、作業員の安全を確保する」と説明している。
新サービスの仕組みは非常にシンプルだ。WBGTセンサーがリアルタイムで環境データを収集し、クラウド上のAIがそのデータを分析する。危険レベルに達した場合、AIは即座にチャットツールを通じて作業員や現場監督に警告を送信する。この迅速な通知システムにより、熱中症の予防と早期対応が可能となる。
新サービスがもたらす現場の変革
MODEの新サービスは、建設現場や他の高温環境での作業において、安全管理のあり方を根本から変える可能性を秘めている。従来の方法と比較して、リアルタイムの監視と即時の通知機能は、作業員の安全を大幅に向上させると期待されている。
導入前の課題
多くの工事現場では、WBGT計を導入しているものの、その活用は限定的だった。現場での表示のみに頼っていたため、WBGTが危険水準に達しても気づかず、熱中症対策が後手に回ることが多かった。
また、大規模な現場や複数の現場を同時に管理する場合、全ての場所のWBGT値を常時監視することは困難だった。このため、局所的な熱中症リスクの上昇を見逃す可能性があり、作業員の安全を脅かしていた。
導入後の改善
MODEのBizStackを導入することで、WBGT計の値をクラウドベースで活用できるようになった。建設現場監督や作業員は、BizStack Assistantに問いかけるだけで現在の熱中症リスクを把握できる。また、スマートフォンでセンサーから離れた場所でも通知を受信できるようになり、現場の安全性が大幅に向上した。
建設業界の安全管理専門家は、「このようなリアルタイム通知システムは、作業員の安全を守る上で革命的だ。特に大規模な現場や複数の現場を同時に管理する際に、その効果は絶大だろう」と評価している。
さらに、AIによる分析と予測機能により、熱中症リスクの事前察知も可能になった。気象データと組み合わせることで、翌日以降の熱中症リスクを予測し、事前に対策を立てることができるようになった。
多様な産業への応用可能性
MODEのサービスは、建設業界だけでなく、さまざまな産業で活用できる可能性を秘めている。例えば、以下のような分野での活用が期待されている：
- ビル管理：屋上や外周での作業時における熱中症対策
- 製造現場：高温の工場内での労働者の健康管理
- 農業：屋外での長時間労働が必要な農作業での安全確保
MODEのマーケティング担当者は、「我々のサービスは、熱中症リスクがある全ての職場環境で有効だ。今後、さらに多くの産業での導入を目指している」と語っている。
各産業の特性に合わせたカスタマイズも可能で、例えば製造業では生産ラインの稼働状況とWBGTデータを組み合わせることで、より精密な熱中症リスク管理が実現できる。農業分野では、作物の生育状況のモニタリングと組み合わせることで、作業者の安全確保と収穫量の最適化を同時に達成できる可能性がある。
BizStackとBizStack Assistantの概要
MODEが提供するBizStackとBizStack Assistantは、現場のデジタル化と安全管理に革新をもたらす先進的なツールだ。これらのツールは、IoTとAIの最新技術を駆使して、現場の課題解決を支援している。
BizStackの特徴
BizStackは、ヒト・モノ・環境のデータを収集・蓄積・活用し、企業の現場DXを加速させるソリューション型IoTプラットフォームだ。ゲートウェイ・データ基盤・BIがオールインワンで備わっており、バラバラな現場データを統合して業務効率化を実現する。
BizStackの強みは、その柔軟性と拡張性にある。様々なセンサーやデバイスと連携可能で、企業の既存システムとの統合も容易だ。データの可視化機能も充実しており、現場の状況をリアルタイムで把握し、迅速な意思決定を支援する。
BizStack Assistantの革新性
2023年6月に発表されたBizStack Assistantは、「どんな現場にもあなたの”AI”アシスタントを」をコンセプトとしている。生成AIとリアル世界を現場データを介してつなぎ、刻々と変わる現場の状況に合わせて自然言語で状況を報告し、人々の業務を支援する。
BizStack Assistantの特筆すべき点は、自然言語処理能力の高さだ。複雑な質問にも的確に回答し、現場の状況を分かりやすく説明する。また、ユーザーの行動パターンを学習し、個々のニーズに合わせた情報提供や提案を行うことができる。
IoTの専門家は、「BizStackとBizStack Assistantの組み合わせは、現場のデジタル化と安全管理に新たな地平を開くものだ」と評価している。これらのツールにより、現場のデータ活用が飛躍的に向上し、業務効率化と安全性向上の両立が可能になると期待されている。
MODEの企業理念と今後の展望
MODEは、シリコンバレー発のスタートアップとして、「現場」のDXを加速させることを使命としている。製造・物流、建設業界を中心に、さまざまな業界に現場データ活用を浸透させ、ビジネスに変革を起こすことを目指している。
MODEのCEO上田学氏は、「我々の目標は、テクノロジーを通じて、より安全で効率的な社会を実現することだ。今回の熱中症対策ソリューションは、その目標に向けた重要な一歩だ」と述べている。
今後、MODEは他のセンサー技術やAI技術との統合を進め、より包括的な現場管理ソリューションの開発を計画している。具体的には、画像認識技術を活用した作業者の動作分析や、ウェアラブルデバイスとの連携による個人の健康状態のモニタリングなどが検討されている。
また、グローバル展開も視野に入れており、各国の労働安全基準に適合したサービスの開発も進めている。気候変動の影響で世界各地で熱中症リスクが高まる中、MODEのソリューションは国際的にも注目を集めている。
業界専門家は、「MODEの取り組みは、IoTとAIの実用的な応用の好例だ。今後の展開が非常に楽しみだ」と期待を寄せている。MODEの革新的なアプローチが、働く人々の安全を守り、産業界全体の生産性向上にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目される。
