栃木県、電通総研と共にスマートシティ実現へ、データ連携基盤構築調査を開始

    画像:PR TIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000279.000043138.html)より

    栃木県と株式会社電通総研が手を組み、データ連携基盤を活用したスマートシティサービスの実現に向けて大きな一歩を踏み出した。2024年8月6日、電通総研は「令和6年度栃木県データ連携基盤構築に係る調査業務」を受託したことを発表した。この取り組みは、急速に進む地方の人口減少や少子高齢化、産業空洞化といった課題に対し、デジタル技術を駆使して解決策を見出そうとするものだ。

    目次

    データ連携基盤が拓く新たな可能性

    栃木県は、県民が便利で快適に暮らし続けることができる地域社会の実現を目指している。そのためには、各種データを効果的かつ効率的に活用し、多様なスマートシティサービスを提供することが不可欠だと考えている。データ連携基盤は、そうしたサービスの基盤となる重要な要素だ。

    電通総研が受託した調査業務は、2024年5月から2025年3月までの期間で実施される。この調査を通じて、栃木県は次世代GIS(地理情報システム)や次期防災情報システムとの連携、公共交通をはじめとした県民向けサービスの検討、さらには県内市町との共同利用に関する調査など、多岐にわたる課題に取り組む。

    次世代GISと防災システムの融合

    本事業の重要な柱の一つが、次世代GISと次期防災情報システムとデータ連携基盤をつなぐことだ。この融合により、単に住民へ防災情報をいち早く届けるだけでなく、庁内のデータ管理を効率化し、効果的な施策立案や迅速な対応を可能にすることが期待される。

    例えば、豪雨時の河川水位データと地形データを組み合わせることで、より精緻な浸水予測が可能になるかもしれない。また、避難所の収容状況や道路の通行可否情報をリアルタイムで共有することで、より適切な避難誘導が実現するかもしれない。こうした取り組みは、県民の安全・安心な暮らしを支える重要な基盤となるだろう。

    公共交通の利便性向上を目指して

    栃木県の取り組みは防災だけにとどまらない。公共交通の利便性向上も重要な検討課題だ。データ連携基盤を活用することで、バスや電車の運行情報をリアルタイムで提供したり、需要に応じた効率的な運行計画を立てたりすることが可能になるかもしれない。

    例えば、人口動態データと公共交通の利用データを組み合わせることで、より効率的なバス路線の設計が可能になるかもしれない。また、イベント情報と連動させることで、大規模イベント時の臨時便の運行をスムーズに行えるようになるかもしれない。こうした取り組みは、マイカー依存度の高い地方都市における公共交通の利用促進につながる可能性がある。

    ユーザーストーリーマップの活用

    電通総研は、県民一人ひとりがどのようにサービスを利用するかを「ユーザーストーリーマップ」としてまとめる計画だ。この手法を用いることで、サービスの利用者視点に立った施策の検討が可能になる。

    例えば、高齢者が病院に通院する際の一連の行動をマッピングすることで、公共交通の利用からデジタル予約システムの活用まで、一貫したサポートが可能になるかもしれない。また、若い世代の就労支援を考える際には、求職活動から就業後のフォローアップまで、切れ目のないサービス設計が実現するかもしれない。

    データ駆動型の政策立案を目指して

    本事業では、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)推進の観点からダッシュボードを構築し、継続的な施策立案・改善が可能な体制を整えることも計画されている。これにより、政策の効果をデータに基づいて検証し、より効果的な施策を打ち出すことが可能になる。

    例えば、子育て支援策の効果を出生率や若年層の転入者数などの指標で継続的に評価し、必要に応じて施策を修正していくことが可能になるかもしれない。また、産業振興策の効果を企業の売上高や雇用者数などのデータで検証し、より効果的な支援策を打ち出すことができるかもしれない。

    県内市町との連携

    栃木県内では、すでに佐野市、矢板市、那須塩原市が独自にデータ連携基盤を導入し、サービスの提供を行っている。本事業では、これらの市の取り組みを調査するとともに、他の市町を含めた共同利用のパターンを検討する。

    この取り組みにより、各自治体が持つ知見やリソースを効果的に共有し、県全体としてより質の高いサービスを提供できる可能性がある。例えば、ある市で成功した子育て支援策のノウハウを他の市町に展開したり、複数の自治体のデータを組み合わせることでより精度の高い施策立案が可能になったりするかもしれない。

    未来を見据えたデータ連携基盤の構築

    2025年度には、本調査結果を踏まえて実際のデータ連携基盤の構築が予定されている。電通総研は、栃木県が保有するシステムやデータを調査し、データ連携基盤の接続方法を明確化する。さらに、県内市町の共同利用やシステム連携、既存システムの拡張など、あらゆる可能性を考慮しながら、最適なデータ連携基盤の仕様を整理していく。

    この取り組みは、単に技術的な基盤を整備するだけでなく、県民の生活をより豊かにする具体的なサービスの実現を目指している。例えば、健康・医療データと環境データを組み合わせた新たな健康増進サービスや、観光データと交通データを連携させた地域活性化策など、データの掛け合わせによる革新的なサービスの創出が期待される。

    先進事例からの学び

    電通総研は、他の自治体での成功事例も参考にしながら、栃木県に最適なソリューションを提案していく。例えば、同社が手がけた岐阜県養老町のデータ連携基盤構築や、宮崎県都城市のスマートシティ構想などの経験が、栃木県の取り組みにも活かされることだろう。

    これらの先進事例から得られた知見を基に、栃木県の地域特性や課題に合わせたカスタマイズを行うことで、より効果的なデータ連携基盤の構築が可能になると考えられる。

    栃木県と電通総研の取り組みは、デジタル技術を活用した地域課題の解決という大きな挑戦だ。この試みが成功すれば、他の地方自治体にとっても貴重な参考事例となるだろう。データ連携基盤を通じて、行政サービスの質が向上し、県民一人ひとりの暮らしがより便利で豊かになることが期待される。今後の展開に注目が集まる。

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