株式会社ChillStackが実施した「会社の経費精算に関するアンケート」の結果から、経費精算における不正や不備の実態、そして電子帳簿保存法改正後の影響が明らかになった。この調査結果は、多くの企業が直面している経費精算の課題を浮き彫りにするとともに、AIを活用した解決策の必要性を示唆している。
経費精算における不正リスクの実態
経費精算は企業にとって重要な業務の一つだが、同時に不正のリスクも高い分野である。ChillStackの調査によると、83.0%の経理担当者が社員の立替経費精算において不正のリスクがあると考えていることが分かった。この数字は、経費精算の管理がいかに重要であるかを物語っている。
さらに注目すべきは、実際に不正や不備を発見した経験を持つ経理担当者の割合だ。調査では、67.5%の回答者が過去に経費精算の不正や不備を発見したことがあると答えている。この高い割合は、経費精算システムの脆弱性や、現行のチェック体制の限界を示唆しているといえるだろう。
発見された不正・不備の内訳
不正や不備が発見された費目のトップ3は、以下の通りとなっている。
- 接待交際費(53.3%)
- 出張費(51.1%)
- 物品購入費(47.4%)
これらの費目は、その性質上、正確な金額の把握や妥当性の判断が難しい場合が多い。特に接待交際費は、ビジネス上の必要性と個人的な利益の線引きが曖昧になりやすく、不正のリスクが高いと考えられる。
また、発見された不正行為の具体的な内容も明らかになった。最も多かったのは「交通費や通勤手当の水増し請求」(51.1%)で、次いで「架空の経費申請」(41.5%)、「業務外の備品購入の申請」(38.5%)となっている。これらの不正行為は、単に金銭的な損失をもたらすだけでなく、企業のコンプライアンスや信頼性にも大きな影響を与える可能性がある。
電子帳簿保存法改正の影響
2024年1月1日から施行された改正電子帳簿保存法は、経費精算のデジタル化を促進することを目的としていた。しかし、この法改正が経理担当者の業務にもたらした影響は、必ずしもポジティブなものばかりではないことが今回の調査で明らかになった。
経費精算の間違いや不適切な申請の増加
調査結果によると、72.0%の経理担当者が電子帳簿保存法改正後に経費の間違いや不適切な申請が増えたと感じている。この数字は、デジタル化が必ずしも正確性や適切性の向上につながっていないことを示唆している。
デジタル化によって経費申請のプロセスが簡略化されたことで、逆に社員側の注意力が低下している可能性がある。また、デジタルツールの使用に不慣れな社員がいることも、間違いや不適切な申請の増加につながっているかもしれない。
経費精算の確認作業の負担増大
さらに深刻なのは、経費精算の確認作業にかかる負担の増大だ。76.5%の経理担当者が、電子帳簿保存法の改正による経費精算のデジタル化で確認作業の手間が増えたと回答している。
この負担増加の具体的な要因として、以下の3点が挙げられている:
- デジタル化で正しく分類されない一部の経費の確認と修正(56.2%)
- デジタル化された証憑の不正や偽造の確認(51.0%)
- 提出された証憑が本当に経費なのか迷うものの判断(45.1%)
これらの結果は、デジタル化が必ずしも業務効率の向上につながっていないことを示している。特に、デジタル化された証憑の不正や偽造の確認が増えたという点は、新たなセキュリティリスクの出現を示唆しており、今後の大きな課題となる可能性がある。
AIを活用した解決策の可能性
このような状況下で、AIを活用した解決策に注目が集まっている。ChillStackが提供する不正経費自動検知クラウド「Stena Expense(ステナ エクスペンス)」は、そのような解決策の一つだ。
Stena Expenseは、企業の個人立替経費の申請・承認データを元に、不正検知AIが自動的に不正や異常(不適切)な利用を検知するシステムである。経費精算データのみならず、従業員の申請履歴も考慮し、異常な経費利用も識別することができる。
このようなAIシステムの活用により、人力では困難な時系列的かつ網羅的な経費申請データの解析が可能になる。これにより、間接部門の生産性向上とガバナンス強化を同時に実現できる可能性がある。
今後の課題と展望
電子帳簿保存法の改正は、経費精算のデジタル化を促進するという当初の目的を達成しつつあるが、同時に新たな課題も生み出している。経理担当者の負担増加や、新たな形態の不正リスクの出現などは、早急に対処すべき問題だ。
これらの課題に対しては、単にシステムを導入するだけでなく、社員教育や業務プロセスの見直しなども含めた総合的なアプローチが必要となるだろう。また、AIやデータ分析技術の進化に伴い、より高度な不正検知システムの開発も期待される。
経費精算のデジタル化は、企業の業務効率化とコンプライアンス強化の両立を目指す上で避けては通れない道だ。今回の調査結果を踏まえ、各企業が自社の状況に合わせた最適な対策を講じていくことが重要となる。同時に、AIやデータ分析技術を提供する企業には、より使いやすく、高精度な解決策の開発が求められている。経費精算の未来は、テクノロジーと人間の知恵の融合にかかっていると言えるだろう。