異常気象に立ち向かう最新技術、エヌエスティが開発したため池監視システムSR-IMAGEが豪雨被害を防ぐ

    SR-IMAGE
    画像:PR TIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000093995.html)より

    近年の異常気象により、全国各地で豪雨による災害が頻発している。特に農業用ため池の決壊は深刻な被害をもたらすケースが多く、その対策が急務となっている。このような状況下で、エヌエスティ・グローバリスト株式会社が画期的なソリューションを開発した。LoRa無線技術を活用した「ため池モニタリング監視 SR-IMAGE」である。このシステムは、自然災害による損失を最小限に抑えるための強力なツールとなる可能性を秘めている。

    目次

    ため池決壊の現状と課題

    日本全国には15万を超えるため池が存在するが、そのうち約7割が江戸時代以前に築造されたものだ。老朽化が進んでいるこれらのため池は、豪雨時に決壊のリスクが高まる。実際、過去10年間のため池決壊の約94%が豪雨によるものであり、年間500〜1,000件もの決壊被害が報告されている。

    ため池の管理は主に地域の水利組合や集落組織に委ねられているが、農村部の人口減少や土地利用の変化により、適切な維持管理が困難になっている。さらに、中山間部では携帯電話の通信圏外となる地域も多く、遠隔監視システムの導入にも障壁があった。

    ため池管理における従来の問題点

    ため池の管理における従来の問題点は多岐にわたる。まず、現地に出向かなければ状況を把握できないため、迅速な対応が困難だった。また、定期的な巡回に必要な労力や人手の確保も課題となっていた。悪天候時には現地への人員派遣ができず、対応が制限されるケースも少なくなかった。

    さらに、通信インフラの不足も大きな障壁だった。携帯電話の圏外地域や固定回線が敷設されていない場所では、連絡手段の確保や遠隔監視システムの導入が困難だった。加えて、商用電源が確保できない場所では、監視機器の電源確保も問題となっていた。

    SR-IMAGEがもたらす革新的なソリューション

    エヌエスティ・グローバリスト株式会社が開発した「ため池モニタリング監視 SR-IMAGE」は、これらの課題を一挙に解決する可能性を秘めている。このシステムは、LoRa無線ネットワークを活用し、通信費用ゼロ円で長距離通信を実現する。

    SR-IMAGEの主要機能

    SR-IMAGEは、水位データと静止画像の監視を可能にする。一定時間間隔でデータを取得し、地図上に画像データと水位データをマッピングする。水位が異常値になった場合、自治体や水利組合などへ警報メールを通知する機能も備えている。

    さらに、水位の異常から正常に戻るまでの間は、10分間隔でデータを取得する。これにより、リアルタイムに近い形で状況を把握することが可能だ。また、水位センサ以外にも、市販のセンサを取り込むことができるため、柔軟な運用が可能となっている。

    革新的な通信技術

    SR-IMAGEの特筆すべき点は、その通信技術にある。LTEとLPWA(LoRa)のハイブリッド通信を採用しており、設置場所の通信環境に応じて最適な通信方式を選択できる。携帯電話が圏内の場合は携帯電話回線を活用し、圏外の場合は250mW高出力の広域無線であるプライベートLoRa通信を利用する。

    安定した通信とデータ取得

    SR-IMAGEはポーリング方式を採用しており、無線通信でよく発生するデータ欠落障害を最小限に抑えている。親局側からデータ取得要求を子局に送信し、子局が応答を返す通信方式を使用することで、安定したデータ取得を実現している。

    SR-IMAGEの技術的特長

    SR-IMAGEは、単なる監視システムにとどまらない、高度な技術の集合体である。その特長は、プライベートLoRa技術と独自の電源ソリューションにある。

    プライベートLoRa技術の活用

    プライベートLoRa技術により、静止画像(高圧縮、分割転送)で現場状況を把握することが可能だ。多段中継局を採用しており、12段ホップで無線エリアを広範囲に拡張できる。250mW高出力無線により、通信が届きにくい環境でも安定した通信を実現している。

    革新的な電源ソリューション

    SR-IMAGEは、ソーラー式電源装置を採用しており、商用電源がない環境でも運用が可能だ。蓄電池の電圧値を計測し、バッテリの使用状況をモニタリングする機能も備えている。無日照や通信頻度に応じて電源容量をカスタマイズすることも可能だ。

    さらに、安全面にも配慮がなされている。猛暑によるバッテリの膨張などの危険性を回避するため、鉛バッテリを推奨している。これにより、長期的な安定運用を実現している。

    SR-IMAGEがもたらす未来

    SR-IMAGEの導入により、ため池管理のあり方が大きく変わる可能性がある。人による定期的な巡回に頼らず、常時監視が可能となることで、異常の早期発見と迅速な対応が可能になる。これは、豪雨時の被害を最小限に抑える上で極めて重要だ。

    また、中山間部など、これまで監視システムの導入が困難だった地域でも、LoRa無線技術により遠隔監視が可能となる。これにより、全国のため池の安全性が飛躍的に向上する可能性がある。

    今後の展開と期待

    SR-IMAGEの技術は、ため池管理にとどまらず、他の分野にも応用できる可能性がある。例えば、河川の水位監視や土砂災害の予測など、さまざまな自然災害対策に活用できるだろう。

    また、農業分野においても、水管理の効率化や生産性の向上につながる可能性がある。IoT技術とAIを組み合わせることで、より高度な予測や制御が可能になるかもしれない。

    SR-IMAGEは、日本の防災・減災対策に新たな可能性をもたらす画期的なシステムだ。今後の更なる発展と普及が期待される。

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