株式会社ルートレック・ネットワークスが、AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」の新モデルを2024年7月に発表した。エントリーモデルの「ゼロアグリLite」とハイエンドモデルの「ゼロアグリPlus」の2機種が同時リリースされ、農業生産者のニーズに幅広く対応できるようになった。この新展開により、気候変動に適応した農業の生産性向上が期待される。
進化を遂げた「ゼロアグリ」シリーズ
2013年の販売開始以来、「ゼロアグリ」は累計出荷台数400台を超え、多くの農業生産者の作業効率化や生産安定に貢献してきた。今回のモデル拡充は、より多くの生産者のニーズに応えるためのものだ。
新たに登場した「ゼロアグリLite」は、予報日射量によりセンサーレスで自動制御可能な潅水施肥システムだ。従来モデルと比較して土壌センサーによる制御機能がなくなり、より安価に提供されることになった。一方、「ゼロアグリPlus」は、潅水施肥の管理に加え、天窓・側窓の開閉やカーテン・循環扇・加温機・CO2施用機といった地上部の環境制御まで可能な統合環境制御システムとなっている。
「ゼロアグリLite」の特徴
「ゼロアグリLite」の最大の特徴は、センサーレスで予報日射比例制御による潅水が可能な点だ。晴天時に供給したい潅水量を設定することで、予報日射量に応じて潅水量が自動調整される。タイマー潅水よりも精密な潅水を実現しながら、センサーを必要としないため、導入コストを抑えることができる。
また、スマートフォンで簡単に設定変更や確認ができるのも大きな利点だ。クラウドからの制御により、潅水施肥量の調整や栽培情報の確認がいつでもどこでも可能となっている。さらに、将来的により高度な制御を望む場合は、従来の「ゼロアグリ」へのアップグレードも可能だ。
「ゼロアグリPlus」がもたらす統合環境制御
「ゼロアグリPlus」は、従来の「ゼロアグリ」のAI潅水施肥機能に加え、地上部の環境制御まで行える統合環境制御システムだ。これにより、管理画面を1つに統合し、利便性が大幅に向上している。
さらに、複数の制御盤を統合することで、コスト削減と設置スペースの最小化を実現している。既存の環境制御機器との連動も可能なため、最小限のコストで導入できる拡張性の高い製品となっている。
農業のデジタル化がもたらす可能性
ルートレック・ネットワークスの新モデル発表は、農業のデジタル化における重要な一歩だと言える。AI技術とIoTの活用により、農業生産者は作業の効率化だけでなく、作物の収量や品質の向上も期待できる。
気候変動が農業に与える影響が懸念される中、AIによる最適な潅水施肥は、環境に配慮した持続可能な農業の実現にも貢献すると考えられる。化学肥料による地下水汚染やCO2排出削減にもつながる点は、特筆に値する。
今後の展望
農業のデジタル化は今後さらに加速すると予想される。ルートレック・ネットワークスの取り組みは、その先駆けとなる可能性がある。特に、ソフトウェア・デファインド・グリーンハウスの概念は、農業生産の柔軟性と効率性を大きく向上させる可能性を秘めている。
今回の新モデル発表が、日本の農業にどのような変革をもたらすのか、今後の動向に注目が集まる。農業のデジタル化が進むことで、食料安全保障や環境保護といった社会課題の解決にも貢献することが期待される。