LINEヤフーが生成AI活用を加速、業務効率化ツール「SeekAI」全社導入で年間80万時間削減へ

    SeekAI
    画像:PR TIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000584.000129774.html)より

    LINEヤフー株式会社が2024年上半期に発表した技術関連の取り組みの中から、特に注目を集めている生成AI活用の新機能やサービスについて詳しく見ていく。同社は、生成AIを活用した業務改善により年間70〜80万時間の削減を目指すなど、積極的なAI活用を推進している。

    目次

    社内向け業務効率化ツール「SeekAI」の全社導入

    LINEヤフーは、生成AIを活用した社内向け独自業務効率化ツール「SeekAI」(シークエーアイ)を全従業員に本格導入した。このツールは、RAG(Retrieval Augment Generation)技術を活用しており、膨大な社内文書データベースから部門ごとに最適な回答を表示することで、社内確認や問い合わせの時間を大幅に削減することができる。

    「SeekAI」の導入にあたり、社内ワークスペースツールのページや社内データを、部門・プロジェクトごとに登録できるよう設定をアップデートした。これにより、検索要件に最適化された回答が表示されるようになり、より効率的な業務遂行が可能となった。

    「SeekAI」導入の背景と期待される効果

    LINEヤフーが「SeekAI」を導入した背景には、社内の情報共有や業務効率化の必要性がある。大規模な組織では、部門間の情報の壁や、必要な情報を素早く見つけ出すことの難しさが課題となっていることが多い。「SeekAI」は、これらの課題を解決し、従業員が必要な情報に迅速にアクセスできるようにすることで、業務の生産性向上を図ることができる。

    特筆すべきは、LINEヤフーが「SeekAI」の導入によって、年間70〜80万時間もの業務時間削減を目指している点だ。この数字は、単なる時間の節約以上の意味を持つ。削減された時間を、より創造的な業務や戦略的な取り組みに充てることで、企業全体の競争力向上につながる可能性がある。

    「Yahoo!検索」に生成AI活用の新機能追加

    LINEヤフーは、「Yahoo!検索」において、生成AIが観光のモデルコースを提案する「観光AIモデルコース」機能の提供を開始した。この機能は、ユーザーが「地名 観光」(例:「京都 観光」)と検索すると、該当エリアの概要などの観光情報に加えて、生成AIがテーマに沿って提案する観光モデルコースを表示する。

    「観光AIモデルコース」機能の特徴と利用シーン

    「観光AIモデルコース」機能は、最大5パターンのモデルコースを提案する。「王道」「ファミリー」「女子旅」「友達」「デート」といったテーマごとにコースが用意されており、ユーザーの目的や好みに合わせて選択できる。各コースには地図と拠点間の移動手段、移動時間が表示され、旅行計画を立てる際の参考になる。

    この機能は、旅行者にとって非常に有用なツールとなる可能性がある。従来の観光情報サイトでは、個々の観光スポットの情報は得られても、それらを効率的に組み合わせた旅程を考えるのは難しかった。「観光AIモデルコース」機能は、この課題を解決し、ユーザーの旅行計画立案をサポートする。

    子供向けサービス「Yahoo!きっず」での生成AI活用

    LINEヤフーは、子供向けの安全安心なポータルサイト「Yahoo!きっず」において、生成AIを活用したオリジナルコンテンツ「カブトムシAI博士」を夏休み期間中の期間限定で提供している。このサービスは、LINEヤフーの子供向けサービスとしては初めての生成AI活用事例となる。

    「カブトムシAI博士」の教育的意義

    「カブトムシAI博士」は、株式会社Gakkenとのコラボレーションにより実現した。カブトムシの生態や飼い方、種類について詳しく学べるWeb図鑑「カブトムシスペシャル図鑑」内に設置され、ユーザーがカブトムシの生態について質問すると「AI博士」が回答する仕組みだ。

    このサービスの教育的意義は大きい。子供たちの興味関心が高い昆虫、特にカブトムシについて、インタラクティブに学ぶことができる。生成AIの活用により、子供たちの疑問にリアルタイムで答えることができ、学習意欲を高める効果が期待できる。

    LINEヤフーの生成AI活用戦略

    LINEヤフーの生成AI活用は、社内業務の効率化から消費者向けサービスの拡充まで、幅広い領域に及んでいる。これらの取り組みは、単なる技術導入にとどまらず、ユーザー体験の向上や新たな価値創造を目指したものだと言える。

    今後の展開と課題

    生成AIの活用が進む一方で、その精度や倫理的な問題についても慎重に対応する必要がある。LINEヤフーは、「Yahoo!知恵袋」での生成AI活用において、有害検知のフィルタリング機能やハルシネーションを抑えるためのプロンプトエンジニアリングなど、継続的な改善を行っている。

    今後は、さらなる精度向上や新たな応用分野の開拓が期待される。同時に、AIの判断に過度に依存せず、人間の創造性や判断力との適切な融合を図ることが重要になるだろう。LINEヤフーの取り組みは、日本のIT業界におけるAI活用の先駆的な事例として、今後も注目されるものと考えられる。

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