NUARL Inovatör X878が個人最適化技術で聴覚体験を革新

    画像:NUARL(nuarl.com/next1/)より
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    MEMSスピーカーとAudiodoの技術が融合する次世代イヤホン

    NUARLブランドで知られるエム・ティ・アイが、2024年第3四半期の発売を目指して開発中の完全ワイヤレスイヤホン「Inovatör(X878)」が注目を集めている。本機は、MEMSスピーカーを搭載し、さらにスウェーデンのAudiodo社が開発した最新のパーソナライズ技術を採用する予定だ。この組み合わせにより、ユーザー個々の聴覚特性に合わせた音響体験を提供することが可能となる。

    NUARLは従来、フルレンジのシングルダイナミック型ドライバーによる高音質再生にこだわってきたブランドだ。しかし、X878ではMEMSスピーカーを追加搭載することで、従来の炭素系素材の振動板が抱えていた高域のディップという欠点を補完する。このハイブリッド構成により、NUARLの理想とする音のキャラクターを維持しつつ、より広帯域で歪みの少ない再生を実現する。

    Audiodoの個人最適化技術がもたらす新たな音響体験

    Audiodoは、ソニー・エリクソンで長年研究されてきた技術を基に設立されたスタートアップ企業だ。同社の技術は、DSP技術と音響心理学の知見を融合させることで、ユーザーの聴覚特性に合わせて音を最適化し、脳の負担を軽減しながらより良い音楽体験を提供することを目指している。

    X878に搭載される予定のAudiodo Personal Sound技術は、医療グレードの厳密な聴覚テストを通じて得られた情報を基に、個々のユーザーに最適化された音響補正を行う。この技術の特徴は、左右の耳それぞれに独立した補正を適用できる点や、音量の変化に応じて補正内容が動的に変化する点にある。

    聴覚テストの精度と独自性

    Audiodoの聴覚テストは、250Hz~8kHz、-80dBまでをカバーする広範囲で精密な測定を行う。テストはイヤホン内で完結するため、外部機器を必要としない点も大きな利点だ。測定結果に基づいて適用される補正は、単なる音量ブーストではなく、音楽に含まれる情報がリスナーにより正確に伝わることを重視している。

    この approach は、単に音を大きくするのではなく、聞こえにくい周波数帯を適切に補正することで、全体的な音質バランスを維持しながら、より鮮明で疲労の少ない音響体験を提供することを目指している。結果として、ユーザーは音量を上げすぎることなく、長時間快適に音楽を楽しむことが可能となる。

    NUARLの独自技術「2×2 Sound」がMEMSとダイナミックドライバーを統合

    X878の開発において、NUARLは単にMEMSスピーカーを追加するだけでなく、独自の「2×2 Sound」テクノロジーを採用している。この技術は、MEMSスピーカーとダイナミック型ドライバーそれぞれに独立したDACとアンプを使用する革新的なアプローチだ。

    この方式を採用した理由は、MEMSスピーカーとダイナミック型ドライバーの周波数特性が大きく異なるため、従来の方法では適切なイコライジングが困難だったからだ。特に複雑な音源を再生する際に問題が顕著になる傾向があった。

    高度な信号処理による音質向上

    2×2 Soundテクノロジーでは、デジタル領域で高域とそれ以外の帯域を分割し、それぞれを別々のDACでアナログ信号に変換する。さらに、異なるアンプで増幅し、各ドライバーに最適化された音響調整を行う。このプロセスにより、クロスオーバー歪みを回避し、MEMSスピーカーとダイナミック型ドライバーの長所を最大限に引き出すことが可能となる。

    この技術は、単に二つの異なるドライバーを組み合わせるだけでなく、それぞれの特性を考慮した精密な信号処理を行うことで、より自然で高品位な音響再生を実現している。NUARLの音響エンジニアたちは、この新しいアプローチによって、従来のシングルドライバー方式では達成が困難だった音質レベルに到達できると確信しているようだ。

    個人最適化がもたらす聴覚健康への貢献

    X878にAudiodoの技術を採用する背景には、単に音楽体験の向上だけでなく、ユーザーの聴覚健康への配慮も含まれている。過度に大きな音量での音楽視聴が引き起こす可能性のある音響性難聴の予防は、オーディオ業界全体で取り組むべき重要な課題となっている。

    Audiodoの個人最適化技術は、ユーザーの聴覚特性に合わせて音を調整することで、聞きにくい周波数帯を補正し、結果として過度な音量上昇を防ぐ効果が期待できる。これにより、ユーザーは適切な音量で音楽を楽しみながら、同時に聴覚の健康を維持することが可能となる。

    聴覚補助デバイスとしての可能性

    さらに、Audiodoは音楽体験の向上だけでなく、聴覚補助デバイスとしての機能改良にも取り組んでいる。加齢などによる聴力の低下や、日常生活における様々な音の聞きづらさを解消できるデバイスとして、X878が果たす役割は大きい。

    医療機器である補聴器とは異なる位置づけながら、音楽再生機器としての高い性能と、個人の聴覚特性に合わせた音響調整機能を兼ね備えることで、X878は新しいカテゴリーの製品となる可能性を秘めている。この approach は、音楽愛好家だけでなく、軽度の聴力低下に悩む人々にも新たな選択肢を提供することになるだろう。

    今後の展開と期待

    NUARLのX878は、現在も開発が進行中であり、ハードウェアは8割方完成しているものの、ソフトウウェアのデバッグと最適化、そして最終的な音質調整の段階にあるという。過去のイベントでデモンストレーションされた音とは大きく異なる可能性があり、最終製品での音質の進化が期待される。

    音楽再生機器としての高い性能と、個人最適化技術による聴覚健康への配慮を両立させたX878は、オーディオ業界に新たな風を吹き込む可能性を秘めている。従来のハイエンドオーディオファンだけでなく、日常的に音楽を楽しむ一般ユーザーや、軽度の聴力低下に悩む人々にとっても魅力的な製品となる可能性が高い。

    2024年第3四半期の発売を目指して開発が進められているX878。その登場は、単に新しいイヤホンの誕生というだけでなく、個人の聴覚特性に合わせたオーディオ体験の新しい時代の幕開けを告げるものとなるかもしれない。オーディオ技術の進化と聴覚健康への配慮が融合した次世代イヤホンの登場に、業界関係者だけでなく、多くの音楽愛好家たちが注目している。

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