ASUSの新型ノートPC「Vivobook S 15 S5507QA」がAI時代の先駆けとなるか、大注目のCopilot+ PC対応モデルを徹底検証

    Vivobook S 15 S5507QA
    画像:materiel.net(www.materiel.net/produit/202402150091.html)より

    マイクロソフトが提唱する「Copilot+ PC」に準拠した新世代のノートPCが登場した。その中でも注目を集めているのが、ASUSの「Vivobook S 15 S5507QA」だ。この革新的なモデルは、AI時代の到来を告げる重要な一歩となる可能性を秘めている。本記事では、このノートPCのハードウェア性能や特徴的な機能を詳細に分析し、従来のノートPCとの違いを探っていく。

    目次

    Snapdragon X Eliteが切り開く新時代

    Vivobook S 15 S5507QAの心臓部には、Qualcommの最新プロセッサー「Snapdragon X Elite」が搭載されている。このプロセッサーは、Copilot+ PCの要件である「40TOPS以上のNPU(Neural Processing Unit)搭載」を満たす唯一の選択肢だ。

    Snapdragon X Eliteは、毎秒45兆回の演算を処理できる強力なNPUを内蔵している。この驚異的な処理能力は、AIタスクの高速化や複雑な計算を必要とするアプリケーションの動作を大幅に向上させる。従来のIntelやAMDのプロセッサーでは実現できなかったパフォーマンスを、このモデルは標準で提供しているのだ。

    プロセッサーの性能に加え、32GBのLPDDR5Xメモリと1TBのPCIe Gen4 SSDを搭載しており、マルチタスクや大容量データの処理にも余裕で対応できる仕様となっている。

    洗練されたデザインと高性能ディスプレイ

    Vivobook S 15 S5507QAの外観は、従来のVivobookシリーズの洗練されたデザインを踏襲している。アルミニウム合金製のボディは高級感があり、マット仕上げで指紋が目立ちにくい。

    最大の特徴は、15.6インチの有機ELディスプレイだ。2,880×1,620ドットの高解像度に加え、DCI-P3カバー率100%、sRGBカバー率133%の広色域表示に対応している。さらに、コントラスト比100万:1、Display HDR True Black 600準拠のHDR表示機能も備えており、鮮やかで立体感のある映像を楽しむことができる。

    圧倒的な色彩表現力

    有機ELパネルの採用により、従来の液晶ディスプレイでは表現できなかった深い黒と鮮やかな色彩を実現している。写真や動画編集、グラフィックデザインなどのクリエイティブ作業をする人にとって、このディスプレイの性能は大きな魅力となるだろう。

    また、最大120Hzのリフレッシュレートとわずか0.2msのレスポンスタイムにより、スムーズな動画再生やゲームプレイも可能だ。ブラウジング時の文字のにじみも最小限に抑えられており、長時間の作業でも目の疲れを軽減できる。

    AI機能がもたらす新たな可能性

    Copilot+ PC対応モデルの最大の特徴は、搭載されているAI機能だ。Vivobook S 15 S5507QAには、マイクロソフトが提供する複数のAI機能が実装されている。

    コクリエイター:AIによる画像生成

    ペイントアプリに追加された「コクリエイター」機能は、ユーザーのラフなスケッチと文字による説明から、AIが画像を生成する革新的な機能だ。絵心がない人でも、イメージを言葉で伝えるだけで、それらしい画像を作成できる。

    この機能は、プレゼンテーション資料の作成やアイデアの視覚化など、ビジネスシーンでの活用が期待される。また、NPUを利用することで、画像生成の速度も従来のCPUでの処理と比べて格段に向上している。

    Windows Studio エフェクト:ビデオ通話の質を向上

    「Windows Studio エフェクト」は、ビデオ通話時のカメラ映像を最適化する機能群だ。自動フレーミング、アイコンタクト、背景ぼかしなどの既存機能に加え、Copilot+ PC独自の機能として、「プロンプター」と「クリエイティブフィルター」が追加されている。

    プロンプターは、画面上の文字を読んでいる場合でもカメラ目線に補正する機能で、プレゼンテーションやオンライン講義での活用が見込まれる。クリエイティブフィルターは肌の状態を補正する機能だが、現時点では補正が強すぎる印象があり、今後の改善が期待される。

    これらの機能は、ZoomやTeamsなどの主要なWeb会議アプリで利用可能で、NPUによる処理によりシステム全体のパフォーマンスへの影響を最小限に抑えている。

    アプリケーションの互換性:課題と展望

    Snapdragon X Elite搭載モデルの最大の懸念事項は、アプリケーションの互換性だ。Arm版Windowsに最適化されていないx86/x64アプリケーションは、エミュレーションによる動作となるため、パフォーマンスの低下が懸念される。

    実際の検証では、多くのx86/x64アプリケーションが問題なく動作し、その速度も十分に実用的だった。しかし、一部のアプリケーションでは正常に動作しない、あるいは機能が制限される事例も確認された。

    日本語入力ソフトの課題

    特に注目すべき問題として、日本語入力ソフト「ATOK」の動作不良が挙げられる。WindowsのシステムUIやArmネイティブアプリケーションでATOKによる日本語入力ができないという致命的な問題が発生している。この問題は、日本のビジネスユーザーにとって大きな障壁となる可能性がある。

    アプリケーション開発者側のArm対応が進めば解決する問題ではあるが、当面はSnapdragon X Elite搭載PCの弱点となることは否めない。

    パフォーマンスとバッテリー駆動時間

    ベンチマークテストの結果、Vivobook S 15 S5507QAは総合的に高いパフォーマンスを示した。特にAI処理に関しては、Intel Core Ultraプロセッサーを大きく上回るスコアを記録している。

    x86/x64アプリケーションのエミュレーション時のパフォーマンスも予想以上に良好で、多くのアプリケーションやゲームが快適に動作する。ただし、最新のIntel Core Ultraプロセッサーには若干及ばない部分もある。

    驚異的なバッテリー駆動時間

    バッテリー駆動時間のテストでは、17時間18分という驚異的な結果を記録した。実際の使用では、この半分程度の9時間前後の駆動が見込まれる。これは、Snapdragon X Eliteの優れた省電力性能によるものだ。

    この長時間駆動は、モバイルワーカーやビジネストラベラーにとって大きな魅力となるだろう。薄型軽量ボディと合わせて、高い携帯性を実現している。

    Copilot+ PCの現状と将来性

    Vivobook S 15 S5507QAは、Copilot+ PCとして先駆的な存在だ。搭載されているAI機能は、ビジネスやクリエイティブワークに新たな可能性をもたらす。しかし、現時点ではこれらの機能はまだ発展途上の段階にあり、今後の進化が期待される。

    IntelやAMDもCopilot+ PC対応プロセッサーの開発を進めており、近い将来には選択肢が増える見込みだ。そのため、Snapdragon X Elite搭載PCの真価は、競合製品が登場してから明らかになるだろう。

    AI時代の先駆者としての可能性

    Vivobook S 15 S5507QAは、従来のSnapdragon搭載PCと比較して大きく進化している。高性能なAI処理能力、優れたディスプレイ、長時間駆動など、多くの魅力的な特徴を備えている。

    一方で、アプリケーションの互換性には依然として課題が残されている。特に、日本語環境での使用に関しては慎重な検討が必要だ。

    しかし、AI機能を積極的に活用したい先進的なユーザーや、長時間のモバイル作業を必要とするビジネスパーソンにとっては、非常に魅力的な選択肢となるだろう。Vivobook S 15 S5507QAは、AI時代のPCの可能性を示す重要なマイルストーンとなる可能性を秘めている。

    今後のソフトウェアの対応状況や、競合製品の登場によって、Copilot+ PCの真価が明らかになっていくことだろう。Vivobook S 15 S5507QAは、その先駆者として、PC業界に新たな風を吹き込むことになりそうだ。

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