アクセンチュア、中小製造業のデジタル化で給与4%アップを実現。地域活性化へ新たな道筋へ

    Accenture
    画像:Accenture(www.accenture.com/jp-ja)より

    アクセンチュアが日本の中小製造業向けにデジタル支援を本格化し、給与アップにつながる成果を上げている。大手企業向けの知見を活かした新たな取り組みが、地域経済の活性化と若者の定住促進に貢献する可能性を秘めている。

    目次

    福島県会津若松市発の革新的プロジェクト

    アクセンチュアが展開する「Connected Manufacturing Enterprises」(CMEs)と呼ばれるプロジェクトは、福島県会津若松市での取り組みが原点となっている。このプロジェクトは、中小製造業の生産性向上を目的とし、ERPシステム「SAP S/4HANA」をベースにした共通プラットフォームを提供する。

    精密機械部品メーカーのマツモトプレシジョンや西田精機など、10社以上の中小企業がすでにこのシステムを導入し、4%の給与アップを実現したという成果が報告されている。現在、アクセンチュアはこの成功事例をもとに、約90社の中小企業に採用を働きかけている。

    地域課題解決への挑戦

    CMEsプロジェクトの根底には、会津若松市が直面する急速な高齢化と人口減少という課題がある。アクセンチュア・アドバンスト・テクノロジーセンター仙台センターのシニア・マネジャー、鈴木鉄平氏は、このプロジェクトの目的を「地元に働く企業があって、暮らしていける仕事を創り出し、賃金アップにつながるようにデジタル化すること」と説明する。

    中小企業のデジタル化における課題

    日本の中小企業のデジタル化は、アクセンチュアの認識によると20年前から停滞している。多くの中小企業経営者は、時間と費用の制約から全体最適化に踏み切れず、部分的な最適化にとどまっているのが現状だ。

    「巧」と「そろばん」のバランス

    鈴木氏は、中小製造業の経営者の多くが「モノづくりが大好きだが、そろばんが弱い」傾向にあると指摘する。具体的には、製品別の原価管理ができていない企業が多く、約100社を調査したところ、製品別に原価管理を行っていたのはわずか5社だったという。

    この「どんぶり経営」の状態では、利益の出ない原因が人件費なのか調達費なのか、どこから改善すべきかが分からず、結果として給与アップにつながらない。

    アクセンチュアの革新的アプローチ

    アクセンチュアは、大企業向けのソリューションを中小企業に適用するのではなく、CMEsという共通プラットフォームを提案している。このSaaS型のシステムにより、導入コストを大幅に削減し、月額制の支払いで利用できるようになる。

    自立を促すセルフ学習プログラム

    CMEsには11カ月のセルフ学習プログラムが組み込まれている。このうち3カ月間はコンサルタントが寄り添い、残りの8カ月はウェブで学習を進める。この方式により、導入コストの削減とデジタル成熟度の向上を同時に実現する。

    地域経済への波及効果

    アクセンチュアの取り組みは、単なる中小企業のデジタル化支援にとどまらず、地域経済全体への波及効果を狙っている。

    新たなサプライチェーンの形成

    宮城県に進出予定の台湾半導体ファウンドリーを契機に、新たなサプライチェーンが形成される可能性がある。鈴木氏は、「これまでの行政の支援は税制など優遇や助成などで、足りないのが高収益につながるデジタルインフラの整備」と指摘し、CMEsがそのデジタルインフラの一部となることを期待している。

    若者の地元定着へ

    大企業の進出と地域企業のデジタル化が相まって地域が活性化すれば、これまで県外に就職していた大学生たちが地元で働くことを選択する可能性が高まる。アクセンチュアは、このような好循環が生まれることを目指している。

    アクセンチュアの中小製造業向けデジタル支援は、単なる業務効率化にとどまらず、地域経済の活性化と若者の定住促進という大きな課題に取り組む新たなアプローチとして注目される。今後、このモデルが全国に展開されることで、日本の産業構造全体に変革をもたらす可能性を秘めている。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    THEIT公式アカウント。日々の主要なITニュースを最速でお届けします。

    目次