ラネットが運営するMVNOサービス「BIC SIM」が、夏季の顧客獲得に向けて大規模なキャンペーンを展開する。店舗限定と全チャネル向けの2つのキャンペーンを同時に実施することで、多様な顧客ニーズに応えつつ、競争が激化するMVNO市場でのシェア拡大を狙う。
店舗限定キャンペーンで実店舗の強みを活かす
BIC SIMは、ビックカメラやコジマ、ソフマップなどの実店舗ネットワークを持つ強みを活かし、店舗限定のキャンペーンを7月31日まで実施する。このキャンペーンは、MNPでの契約者を対象に、初月無料やポイント還元、iPhone割引など、複数の特典を用意している。
実店舗での契約を促進することで、顧客との対面でのコミュニケーションを重視し、サービスの詳細説明や端末の実機確認など、オンラインでは難しい付加価値を提供する狙いがあると考えられる。
初月無料とポイント還元で即時メリットを提供
店舗限定キャンペーンの目玉として、MNPでギガプランの音声SIMまたは音声eSIMを契約した場合、利用開始月の月額料金が無料になるサービスを提供する。さらに、5GB~50GBのプランを契約した場合、1万ビックポイントが付与される。
これらの特典は、顧客に即時的なメリットを感じさせることで、契約の決断を後押しする効果が期待できる。特にポイント還元は、BIC SIMの親会社であるビックカメラグループの店舗で使用できるため、顧客の囲い込みにも繋がる戦略だ。
iPhoneの割引でハイエンド顧客の獲得を狙う
店舗限定キャンペーンのもう一つの目玉が、MNPでギガプラン(5GB~50GB)を契約し、同時にSIMフリーのiPhoneを購入する場合に適用される1万5000円の端末割引だ。
この施策は、高額なiPhoneユーザーを取り込むことで、ARPUの高い顧客層の獲得を狙っているものと推測される。iPhoneユーザーは一般的にデータ通信量が多く、高額プランを選択する傾向があるため、長期的な収益に貢献する可能性が高い。
夏得キャンペーンで幅広い顧客層にアプローチ
BIC SIMは、店舗限定キャンペーンと並行して、オンラインを含む全チャネルで利用可能な「夏得キャンペーン」を9月2日まで実施する。このキャンペーンでは、音声SIMの月額料金割引と通話定額オプションの割引を組み合わせることで、より幅広い顧客層にアプローチしている。
長期的な顧客維持を見据えた料金割引戦略
夏得キャンペーンでは、新規契約やMNPでギガプラン(5GB~50GB)を契約した場合、利用開始月から6カ月間、月額料金が500円割り引かれる。この長期にわたる割引は、顧客の初期コストを抑えつつ、半年間という期間で十分にサービスの品質や使い勝手を体験してもらうことで、継続利用を促す狙いがあると考えられる。
通話需要の取り込みで顧客満足度向上を図る
さらに、通話定額オプションを同時に申し込むと、6カ月間にわたってオプション料金が400円割り引かれる。対象となる「通話定額5分+」「通話定額10分+」「かけ放題+」といったオプションは、ビジネスユーザーや通話を多用する顧客層にとって魅力的な提案となっている。
この施策は、データ通信だけでなく、音声通話のニーズも取り込むことで、顧客満足度の向上と解約率の低下を図る狙いがあると推測される。
MVNOの価格競争力維持と差別化が課題に
BIC SIMの大規模キャンペーン実施は、MVNO市場の競争激化を反映しているものと考えられる。大手キャリアのサブブランドの台頭や、他のMVNOとの価格競争により、顧客獲得コストが上昇している現状が背景にあると推測される。
今後、BIC SIMを含むMVNO各社は、単なる価格競争だけでなく、サービスの質や独自の付加価値提供による差別化が求められるだろう。実店舗ネットワークを活かしたサポート体制の強化や、ビックカメラグループとの連携による独自サービスの展開など、BIC SIMならではの強みを活かした戦略が今後の成長のカギとなる可能性がある。