OMデジタルソリューションズが天体撮影愛好家の期待に応える画期的な製品を発表した。マイクロフォーサーズシステム規格に準拠したミラーレスカメラ「OM SYSTEM E-M1 Mark III ASTRO ボディマウントフィルターセット」が7月25日から受注生産品として発売される。この新製品は、天体撮影の世界に新たな可能性をもたらすと考えられる。
天体撮影に特化した画期的な機能
「OM SYSTEM E-M1 Mark III ASTRO」は、既存の「OM-D E-M1 Mark III」をベースにしながら、天体撮影に特化したユニークな機能を搭載している。最も注目すべき点は、センサー前方に配置されたIRカットフィルターの光学特性を最適化したことだ。
この改良により、天体撮影において重要なHα線の透過率が約100%まで向上した。Hα線は星雲が放つ光の波長の一つであり、この技術革新によって、赤い星雲の美しい形状と色彩を鮮やかに捉えることが可能になった。天体写真愛好家にとって、この機能は非常に魅力的だと言えるだろう。
多彩な撮影オプション
本機は、別売りの「M.ZUIKO DIGITAL」レンズと組み合わせることで、広大な星空の風景から特定の星座、さらには遠方の星雲まで、幅広い天体を撮影することができる。また、市販のマイクロフォーサーズ対応アダプターを使用すれば、天体望遠鏡に取り付けての撮影も可能だ。
この柔軟性は、天体撮影の愛好家にとって大きな魅力となるだろう。様々な撮影シーンに対応できることで、創造性を存分に発揮できる環境が整っている。
革新的な撮影テクニック
「OM SYSTEM E-M1 Mark III ASTRO」は、従来の天体撮影の常識を覆す機能も搭載している。通常は手持ち撮影時に使用する「手持ちハイレゾショット」機能を、カメラを三脚や赤道儀に固定した状態で使用することで、ボディ内で「スタッキング処理」をワンショットで行うことができる。
この機能は、複数の画像を重ね合わせることで画質を向上させる技術だ。従来は後処理で行っていた作業をカメラ内で自動的に行えるようになったことで、撮影者の負担が大幅に軽減される。ただし、1コマあたりの露出時間は星が点に写る程度のシャッタースピードに設定する必要がある点に注意が必要だ。
カスタマイズ機能
さらに、星空撮影に適したカメラ設定をカスタムモードC1、C2(モードダイヤル)に搭載している点も見逃せない。これにより、撮影者は複雑な設定を毎回行う必要がなく、素早く最適な撮影モードに切り替えることができる。
付属フィルターの活用
本製品には、カメラボディ内部(マウント部とイメージセンサーの間)に取り付けるフィルターとして、光害カットフィルター「BMF-LPC01」とソフトフィルター「BMF-SE01」が付属している。これらのフィルターは、天体撮影の質を更に向上させる重要なアイテムだ。
光害カットフィルターは、都市部での撮影時に問題となる人工光源の影響を軽減し、よりクリアな星空を撮影することを可能にする。一方、ソフトフィルターは星の輝きを柔らかく表現し、幻想的な雰囲気を演出することができる。
フィルターの単体販売
興味深いことに、これらのフィルターは単体でも販売される。「BMF-LPC01」は52,250円、「BMF-SE01」は37,400円で購入可能だ。これにより、既存のカメラユーザーも天体撮影の質を向上させる機会を得ることができる。
製品の位置づけと今後の展開
「OM SYSTEM E-M1 Mark III ASTRO」は、天体撮影に特化した製品であり、一般的な被写体の撮影には適していない点に注意が必要だ。Hα線の透過率を大幅に向上させているため、通常の撮影では赤味の強い画像になってしまう。
しかし、この特性は逆に天体撮影における本製品の専門性を示している。天体撮影愛好家にとって、この製品は従来のカメラでは得られなかった撮影体験を提供する可能性を秘めている。
今後、この製品がどのように天体撮影の世界に影響を与えるか、そして天体写真の表現の幅をどこまで広げることができるか、注目に値する。また、この技術が他の分野にも応用される可能性も考えられ、カメラ業界全体に与える影響も無視できないだろう。